▽ 覚えることはまだまだある 15
「今、若がディーヴァを驚かせたことで雷がどこに落ちたか、わかってる?」
「い、いや…」
「本来ディーヴァが当てようとしてた的を逸れて、ダンテの近くに落ちたのよ。当たらなかったからよかったものの、一歩間違えば怪我をする事態だったってわかってる?」
見てみなさい、と言うリアラの言葉に若が彼女の指差す方へと視線を向けると、確かに彼女のパートナーである兄のいる近くの床が焦げていた。自分と同じ方へ視線を向けたディーヴァは状況を把握したようで、慌てて兄の方へ駆け寄る。
「髭さん、ごめんなさい!大丈夫ですか!?」
「大丈夫だ、心配しなくていい。それにディーヴァのせいじゃないだろ?」
半ば涙目になっているディーヴァを安心させようと、ダンテは彼女の頭を撫でる。リアラの怒る理由にようやく気づいた若は、ぎこちなく彼女の方へと視線を戻す。視線は今だ冷たく自分に向けられている。
「何か言うべきことがあるんじゃないの?」
「……すいませんでした……」
「何をしてすいません、なの?」
「……ふざけてすいませんでした……」
「それは誰に言うべき言葉?」
「……兄貴、悪い……」
リアラの怒りに圧され、若はチラリと兄を見やると、視線を彷徨わせながら謝罪の言葉を口にする。いつもの元気はどこへやら、大人しくなってしまった弟にダンテは苦笑する。
「まあ、ちょっかいを出すのも程々にな。リアラ、それくらいで許してやってくれ。確かに俺の近くに雷が落ちたが結果的に俺は怪我してないし、若も反省してるみたいだしな。次から気をつけるってことでいいだろ」
「…ダンテがそう言うなら…」
まだ納得はできていないが、本人がいいと言っているならこのまま自分が怒るのも筋違いだろう。ため息をつきつつそう言ったリアラにホッと安堵の息をついた若だったが。
「若、次に同じことしたら…ただじゃ済まないからね?」
リアラからニッコリと笑って告げられた言葉に、若はビシリと固まる。ディーヴァは怖いよう、とプルプルと震え、それを見ていたダンテは苦笑する。
「わー…リアラ、怖い…」
「当然の結果だろう、彼奴も偶には痛い目に合わないと分からんだろうからな」
少し離れたところから見ていたルティアもディーヴァと同じ言葉を呟き、傍でパートナーの練習を見ていたバージルはフン、と鼻を鳴らして言い捨てたのだった。
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