▽ 覚えることはまだまだある 14
「一人にしちゃってごめんね、ディーヴァ。上手くいってる?」
「うーん、半分半分かなあ。最初の一回は上手くいったけど、調子に乗って連発してたら全然当たらなくて。ちゃんと集中したら当たるんだけど」
「そっか。なら、今は集中して一つ一つ確実に当てていくことに専念しましょう。集中力を維持しながら魔法を使うのは大変だし、疲れてしまうけれど、練習を重ねて少しずつ慣れていこうね」
「うん!」
「よし、じゃあもう一回やりましょう。さっきの的に雷を当てられた時を思い出して、集中して。静かに、気持ちを落ち着けて」
「うん。……」
ゆっくりと深呼吸をして、先程のように集中力を高めるディーヴァ。そして、杖を振り下ろそうとした、その時。
「わっ!」
「きゃっ!?」
「!」
いつの間に後ろにいたのか、若が大きな声を出してディーヴァを驚かせた。悲鳴を上げて肩を跳ねさせたディーヴァはその拍子に魔法を放ってしまい、雷の落ちる音が辺りに響く。予想外のことに彼女と共に驚いていたリアラは音のした方を見る。雷は目標の的には当たっておらず、落ちた先は…
「おー、危ねえ危ねえ」
「……」
のんびりと零しながら、ダンテが焦げた床を見つめている。的から逸れた雷はどうやら自分のパートナーの近くに落ちたらしく、彼はそれを一歩退いて避けたらしい。そのまま元の位置に立っていたとしても当たりはしなかっただろうが、一歩間違えれば直撃していた可能性だってある。
「ダンテ、何するの!集中してたところだったのに!」
「ずっと見てるだけとかヒマ過ぎんだよ、ちょっとは動かねえと飽きて眠くなっちまう」
「さっきダンテと話しながら魔法の練習してたでしょ!集中しなきゃなんだから邪魔しないで!」
「つれねえな、少しは構えよ」
「………」
何がつれないだ、何が。ダンテが怪我をしかねない事態だったのに。反省の色が見えない若にリアラの目が細められ、彼女の周りの空気が急激に冷たくなる。いち早くそれに気づいたダンテが顔を上げた時には、彼女は静かに口を開いていた。
「…若」
「あ?…な、何だよ」
「リアラさん…?」
口喧嘩を中断された若が視線をずらすと、静かな怒りを秘めた瑠璃の目が刺すように自分を見ていて、思わずたじろぐ。リアラの隣りにいたディーヴァも彼女の纏う空気が変わったのに気づき、びくりと肩を震わせる。
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