▽ 覚えることはまだまだある 11
召使いのホムンクルスに頼み、用意してもらった紅茶で喉を潤すと、一息ついてからリアラは口を開く。
「だいぶ時間かけちゃったけど、基本的な鍛錬はこれでいいかな。次は二人の希望に沿って鍛錬をしていくね。一人ずつになっちゃうけど…」
「全然いいよ、まだまだ時間あるし」
「うん!気にしないで、リアラさん!」
「ありがとう。じゃあ、まずはどっちから始める?」
「あたしやりたい!」
珍しくやる気を出しているらしく、はい!とディーヴァが元気よく挙手する。
「わかった。じゃあ、ルティアは見ててもらう側でいいかな?」
「うん。見てるだけでも勉強になりそうだし、ここで座って見てるよ」
ルティアの了解を得て、リアラとディーヴァは椅子から立ち上がる。
「ディーヴァの希望は雷属性の魔法を意識的に使いこなせるようになりたい、だったわね」
「うん。今のところその魔法を使えるのは怒った時だけだし、当ててる相手ダンテばっかりだし。リアラさんみたいに魔獣を捕まえるお仕事はしてないけど、使えたらもしもの時に役に立つかなって」
「そうね、魔獣と戦わないにしろ、会ってしまった時に逃げる時間を稼ぐために使うこともできるしね」
「それにダンテが変なことしようとした時にお仕置きに使えるよね」
「そうね」
「おい、オレのこと何だと思ってるんだよ」
話の内容に若が口を挟むが、完全に無視の二人。
「まずはディーヴァが無意識に雷属性の魔法を使う時の状況を整理してみましょうか。と言っても、ついさっきディーヴァ自身が言ってたけどね」
「怒った時?」
「そう。だから、まずは意識して雷属性の魔法を使うために、無意識でその魔法を使っている時…怒った時のことを思い出すの。とはいえ、あまり怒った時のことばかり思い出すのは気持ちのいいことではないから、あくまでとっかかりとしてね」
「うん、わかった」
ディーヴァはこくりと頷く。
「じゃあ、まずは一ヶ所に雷を当てる練習から始めましょうか」
リアラは杖を構えると、魔法で少し離れた位置に三角錐の形をした氷を作り出す。それは室内にある椅子の脚くらいの高さで、離れていても視認しやすい大きさだ。外れた雷で絨毯が焦げないようにと念のために三角錐の周りに氷を薄く張って、リアラはそれを指差す。
「私が作ったあの的に雷を当ててみて。焦らなくていいわ、ディーヴァが必要なだけ時間をかけて、あの一点だけに集中して」
「うん」
リアラの言葉にしっかりと頷き、ディーヴァは愛杖のロサレプスを構える。目を閉じて何度か深呼吸を繰り返し、集中力を高める彼女をリアラ達は静かに見守る。
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