▽ 覚えることはまだまだある 10
「わ…」
初めて見た武器にリアラは思わず声を漏らす。片手でくるりと回転させ、刃を下に向けると、ダンテはリアラに剣を差し出す。
「持ってみるか?」
「…いいの?」
パートナーとはいえ、他の人の大切な武器を触るのは気が引ける。遠慮がちに聞いたリアラにダンテは頷く。
「ああ」
「…じゃあ、お借りします」
ぺこりと頭を下げて、リアラはそっと剣に手を伸ばす。
「重い…」
両手で持ってはいるが、かなりの重さだ。床につけてしまわないようにするのが大変で、とてもだがじっくりとは見ていられない。自分の様子を見かねたのか、苦笑したダンテが剣を持ってくれた。
「大丈夫か?」
「うん。結構重いのね、ダンテの剣…」
「そうか?俺はそうでもないんだがな。けど、確かに人間や魔女には重いかもしれねえな」
そう言って片手で剣を構えるダンテに、やっぱり強いんだなあ、とリアラは思う。普段は毒針だけで相手と戦っていることを考えると、プラチナクラスは伊達ではない、ということか。
「このまま俺が持ってた方がよさそうだな。リアラ、この状態で見れるか?」
「あ、うん」
ダンテの言葉にリアラは頷き、回るように動いて角度を変えながら剣を見る。ダンテの腕の位置がちょうど自分の視界の高さにあるので見やすい。しばらく剣を観察していたリアラはうん、と再び頷く。
「ある程度把握したわ。作ってみるから、ちょっと待ってて」
「ああ」
ダンテが頷くと、リアラは目を閉じ、両手を胸の前に掲げる。雪が舞うように淡い水色の魔力が溢れ、徐々に剣を形作る。やがてできた大剣は、氷でできていることを除けば見た目はダンテの持つ剣とそっくりだった。
「…よし、できた。ダンテ、これ持ってみてくれるかな?」
「ん?ああ」
物を浮かせる魔術を使っているのだろう、リアラの掌より少し上、空中に浮かぶ剣を手に取る。腕にかかる重さに、ダンテはあることに気づく。
「重さも似せたのか」
「うん、模写するなら細かいところまで似せないとね。…どうかな?」
「よくできてるよ、一度見ただけでここまで似せられるなんてすごいな」
二つの剣を持ち比べながらダンテは感心したように返す。剣の形、細かな装飾、重さまで模写した剣は本物だと言われてしまえば信じてしまうであろう程の再現度だ。彼女の性格も影響しているのだろうが、ここまでできる程に彼女は自身の魔力をコントロールできているということだろう。本当?ありがとう、と嬉しそうに笑うリアラにダンテも優しい笑みを返す。
「リアラー、バージルとダンテの武器模写できたから見てみてくれないかな?」
「わかった!ちょっと行ってくるね、ダンテ」
「ああ」
ルティアの呼びかけにリアラは頷き、ルティアとディーヴァの元へと向かう。教える側として二人に真面目な顔で話すリアラの姿を、ダンテは静かに、けれども暖かな眼差しで見守っていた。
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