▽ 覚えることはまだまだある 4
魔獣姿でパートナーが来るのを待っていたダンテは呼ばれて後ろを振り向く。
「待たせちゃってごめんね」
『いや。にしても、荷物多いな』
普段はそれ程荷物を持たない彼女だが、今日は肩から鞄を下げ、手には大きめのバスケットを持っている。ダンテの言葉にリアラは苦笑する。
「バスケットには紅茶とお菓子、鞄には勉強に使うノートやペンを入れてるからね、大荷物になっちゃった。ごめんね、今日は重いけれど…」
『それくらいは重い内に入らないから気にするな。お前が持ってる方が大変だろ、早く乗れ』
「うん、ありがとう」
トトッと駆け足でダンテに近づき、いつものようにリアラはパートナーの背中にゆっくりと腰を下ろす。だが、今日はバスケットを抱えていて手が塞がっているため、どう身体を支えようかと考えていると、ダンテがこちらを振り向いた。
『それはそのまま持ってろ。ちょっと失礼するぞ』
「え?…ひゃっ!」
首を傾げたリアラは、腹部を掠めた何かにびくりと肩を跳ねさせる。視線を下げると、白と灰色の縞が入った尻尾が自分の身体を一周するようにくるりと巻きついていた。
『こうやって尻尾で支えてたら大丈夫だろ。驚かせてごめんな』
「う、ううん、ありがとう。変な声出しちゃってごめんね」
恥ずかしさに顔を真っ赤にするリアラにくすりと笑みを零し、ダンテは出発の意を告げる。
『準備もできたし、そろそろ行くぞ』
「う、うん」
リアラが頷いたのを確認し、ダンテは翼を広げ、バサリと羽ばたかせる。身体は風に乗り、青く澄んだ空を進んでいく。
『見た感じ大丈夫だとは思うが、具合悪かったりしないか?』
「うん、大丈夫。ダンテが傍にいてちゃんと休むように言ってくれたから無理はしてないし。きっとダンテが傍にいてそう言ってくれなかったら、私、無理してた」
ありがとう、ダンテ。そう言う彼女の顔色は明るく、体調には問題なさそうだ。そうか、とダンテは内心ほっとしながら返す。
あれから話はあっという間に進み、場所や日取りもすぐに決まった。決まってしまったものは仕方がないと気持ちを切り替え、リアラはルティアとディーヴァに勉強会でやりたいことについて聞き、何を教えるか、どう教えるかを空いた時間で考えた。二人のためにと真剣に考えるリアラの邪魔をしないようにダンテはなるべく彼女に話しかけないで傍にいるだけにしていた。離れて見守っているだけでもよかったのだが、それだと彼女が勉強会のことばかりを考えて無理をしかねないと思い、あえてすぐ傍にいてある程度の時間で休むように言っていた。それが功を奏したようだ。ふいに、リアラが謝罪の言葉を口にする。
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