▽ 覚えることはまだまだある 3
「リアラに魔法を教えてほしいから説得してるってわけか」
「そういうこと!」
握り拳を作ってルティアは力強く頷く。一緒に話を聞いていたバージルもふむ、と頷く。
「リアラを教師として、か。成る程、面白そうだな」
「珍しいな、バージルがこういうことに興味を示すなんて」
「魔女の勉強会など滅多に見る機会はないからな。それに、同じ年の同じ属性の者がどう教えるのか興味がある」
「なるほどな。よかったなリアラ、バージルは滅多にこんなこと言わないぜ、それだけお前の実力を認めてるってことだ」
「そうなんだ…ありがとう、バージル。けど、バージルが期待する程のものじゃないと思うよ?教えられることを教えているだけだし…」
素直に例を述べつつも困り顔で返すリアラに、そんなに謙遜しなくてもいいじゃねえか、とダンテが言う。
「たまにお前が勉強に使う植物図鑑を一緒に見せてもらってるが、お前が隣りで説明してくれるからただ見るよりわかりやすいしな」
何?とバージルが信じられない、といった顔でダンテを見る。
「図鑑とはいえ、お前が本を読む、だと?信じられん…」
「おいおい、失礼だな。まあ、確かに俺は本なんか読まないけどよ」
(兄弟にもそう思われてるんだ…)
以前、薬草や毒草の知識の話をしていた時に彼自身が言った言葉を思い出して、改めてダンテはあまり本を読むことがないのだとわかった。なら、自分が読んでいる本に興味を示してくれるのは珍しいことなんだな、とリアラが思っていると、ならば、とバージルがこちらに視線を向ける。
「尚更その勉強会を見てみたくなった。滅多に本を読まない髭に興味を持たせる程だ、お前は教えるのが上手いんだろう」
「ええっ!?」
ダンテが興味を持ってくれたんであって、私が興味を持たせたわけではないんだけれど!?予想外の展開にリアラは焦り、驚きの声を上げたパートナーの様子をおー、珍しいな、と呑気に見るダンテ。自分のパートナーが味方についたことにこれ幸いとばかりにルティアは笑顔で言う。
「バージルもこう言ってることだし、決まりってことでいいよね!場所は死神さんのお城にしよっか、あそこ、広くて使いやすいし!」
「なら書斎がいいだろう、死神には俺が話をしておく」
「わかった、じゃあ私はディーヴァに電話して都合のいい日を聞いてくるね!」
リアラが戸惑っている間にどんどん話は進み、それぞれの用事のためにルティアとバージルは応接間を出ていってしまった。置いてけぼりになってしまったリアラに近づき、ダンテは彼女の肩に手を置く。
「まあ、決まっちまったもんは仕方ねえだろ。がんばれよ」
励ましているように見えて、顔は面白いことになったと言わんばかりの笑顔だ。リアラはガックリと肩を落とすのだった。
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