DMC×魔女パロ | ナノ


▽ 雨が止むまで 15

(…あんなに誰かに自分のことを話したのは、初めてかもしれないな)


もちろん、ダンテやルティア達にも自分の話はしているが、過去のことを含め、あんなに深く自分のことを話したのは初めてかもしれない。


(……)


…なぜ、お前は悪に染まらずに生きてこられたのだろうな。
そう言って自分…いや、自分を通して何かを見ていた彼女の顔に、リアラの脳裏にはある人物が思い浮かんでいた。


(ルティアのお母さんを、思い出していたのかな…)


ルティアの母親について、リアラはあまり知らなかった。ルティアから自分が小さい頃に死んだと聞いていたし、育て親の死神がいたからあまり気にすることもなかった。けれど、呪術師の件からもうすぐで一ヶ月が経つという頃、仕事でルティアの家に薬草を配達に行った自分に話を聞いてほしいと言った彼女がポツリと零した一言。

『私のお母さま、呪術師なんだって』

その言葉に、リアラは紅茶を飲む手を止めた。ルティアは俯いて両手でティーカップを握りしめ、やがて少しずつ話し始めた。呪術師に捕まり、禁術で氷の檻に閉じ込められていたあの時、呪術師を通して聞こえた呪術師と死神の会話。そして、死神の城に行って確認した、自分の母が呪術師だという事実。話し終えたルティアに、リアラは一度目を閉じて一言、こう言った。

『…私は、ルティアのお母さんはいい人だと思うよ』

予想外の返答だったのか、ルティアはバッと顔を上げてリアラを見た。深緑の瞳は驚きに見開かれている。リアラは静かに、ゆっくりとルティアに理由を話す。

『死神さんの言う通り、呪術師という事実に囚われてはいけないと思うの。ルティアは私が魔獣の血をひくと知っても、その事実に囚われないで私自身を見てくれたでしょう?』

今の話には自分も驚いたが、すぐにルティアの母親は悪い人ではないと思った。確かに呪術師には悪いイメージしかないが、物事には悪の面もあれば、善の面もある。外見だけに囚われていては、本当のことは見えない。外見だけで判断されて拒絶される痛みを、自分は痛い程知っている。だから。

『お母さんが呪術師だという、その事実だけに囚われてしまわないで。もし、本当に悪い人だったなら、死神さんがルティアのお母さんの隣りにいることはなかったし、死神さんがルティアを育ててくれることだってなかったのよ』

死神さんには死神さんなりの想いがあって、ルティアのお母さんの隣りにいたはず。ルティアのお母さんだって、何かしらの想いがあって死神さんにルティアを託したはず。

『ルティアは、愛されて育ったんだよ』

自分の両親が、自分を愛情を持って育ててくれたように。ルティアの母親も、ルティアを愛情を持って育てたはずだ。死神に託す、その日まで。死神もルティアの母親の意思を引き継いで、愛情を持ってルティアを育てたはずだ。リアラの言葉にルティアは俯き、震える声でうん、と小さく頷いた。ひっく、ぐすっ、と泣いて肩を揺らす彼女の頭に手を伸ばして、リアラは彼女が泣き止むまでずっと頭を撫で続けた。

prev / next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -