▽ 雨が止むまで 6
「そうか、彼奴にも言われたか。まあ、分かり易い方が彼奴には好ましいだろうよ。…それだけではないのだろうがな」
「え…?」
「何、気にするな。要はお前の中身を気に入っているということさ」
彼奴はやけに人間のような性格をしているからな、と死神は付け加える。確かにそうですね、とリアラは笑い、紅茶を一口飲む。スパーダの子であり、魔獣と魔女の子である彼等五兄弟は魔界では有名で、自分にもその噂は届いていた。とはいえ、知っていたのは兄弟それぞれの属性と別称くらいだったが。それが、ルティアの友人となったリアラがその五兄弟の内の一人と契約したということで顔を合わせる機会ができ、今では話し相手の一人として付き合いがあるわけだが、最初に顔を合わせた時はやけに人間のような性格をしているな、と思ったことをよく覚えている。通常、魔獣は実力主義で他者を守るなんて事を微塵も考えはしない。だが、彼は自分から他者に接し、時には他者を気遣い、他者を守ろうとする。リアラ相手ならばその面は顕著で、まるでルティア相手のバージルのようだ。
…いや。
(少し、違うかもしれないな)
会った当初からリアラを守ろうとはしていたが、今はよりその面が強くなっているように見える。パートナーである彼女に向ける眼差しは優しく、他者には向けないであろうそれは彼の心情を物語っているように思える。
(まあ、リアラ本人に自覚はないだろうがな)
他者から何かを貰ってばかりだと思う彼女は、自身がダンテに変化を与えているなどとは思いもしないだろう。
(暫くは様子見だな)
例えその事実を教えたとしても彼女の考えは変わらないだろうが、言わないでいた方が面白そうだ。そう思い、死神も紅茶を一口口にする。
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