▽ 雨が止むまで 5
「聞くまでもないのだろうが、お前の言う『支え』にはお前のパートナーも入っているのだろう?」
「もちろんです」
予測はできていたが何となく聞いてみたくなってそう投げかけると、リアラは即座に頷く。
「ダンテは大切な人であると同時に私の命の恩人です。ダンテが小さい頃の私を助けてくれたから、今の私があるんです」
「当の本人はそうは思っていないだろうがな」
「そうでしょうね、契約を結んだ日にたまたま気づいて助けただけ、と彼が言っていましたから。…それでも、助けてくれたことには変わりないんです」
自分を助けたのが偶然だったとしても、彼は気づいて助けてくれた、手を伸ばしてくれた。魔獣と魔女の間に生まれた子という境遇から、まだ理解が及ばない頃から差別を受けてきて、自分に手を差し伸べてくれる人は少なかった。そんな中で、見も知らない自分を助けてくれたあの手は優しく、暖かかった。いつだってはっきりと思い出せる程に、心に残っていた。そうか、と死神は頷く。
「二度も助けられてそのまま契約とは、お前達二人は不思議な縁で繋がっているものだな」
「やっぱりそう思いますか?未だに私も不思議に思っているんです、どうしてダンテは私と契約を結んでくれたんだろう、って」
契約を結んだあの日だって、今だってたくさん助けてもらってばかりで、何かを返せているとは思えないのに。首を傾げるリアラに死神はクッと笑う。
「それは彼奴がお前を気に入っているからだろう。お前のような性格の奴はなかなかいないからな」
「そう、ですか?」
「ああ。周りから見れば冷静な奴というだけなのだろうが、その実接してみれば誰に対しても丁寧で気遣いができる実直な性格だからな。あと、意外と顔に出やすい」
「似たようなことをダンテにも言われました…」
隠しているつもりでも顔に出てしまっているらしく、よく、こういう顔をしている、とダンテに言われてしまう。一度言葉に詰まってからそう言ったリアラに死神はおかしそうに笑う。
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