▽ 雨が止むまで 2
「ダンテ、大丈夫かな…」
雨で霞む景色を見つめ、リアラはポツリと呟く。
配達の仕事も魔獣退治の仕事もないこの日、久しぶりに魔界にでも行ってくるかな、とダンテが言った。両親の様子を見てくるついでに一番上の兄と話してくるとのことで、リアラは快く送り出した。離れたところに住む家族を気にかけるのは自然なことだと思うし、会いたいと思うのも普通のことだと思う。家族思いの彼を見ていて、私も時々は父様や母様に会いに行かなきゃな…とリアラは思った。
(雨が降るだろうなとは思ってたけど、まさかこんなに降るなんて…)
彼が出かける時は曇り空ではあったものの雨は降っていなかったため、こちらでは雨が降っているだなんて知らないだろう。この様子だとしばらく雨は止みそうにない、きっと彼はびしょ濡れで帰ってくるだろう。
(ダンテが帰ってきたら温かい紅茶を淹れてあげよう)
午前中にお風呂の掃除は済ませてあるからお湯を入れて、あとは着替えの用意だろうか。雨で身体を冷やして帰ってくるであろうパートナーのためにできることを考えていたリアラは、ふいに感じた気配に窓から視線を離す。
(この気配…死神さん?)
知っている気配に首を傾げる。こんな雨の中来るなんてどうしたのだろうか、そう思いながらもとにかく出迎えなければとリアラは玄関に向かう。ガチャリと扉を開けると少し離れたところに彼女の姿があった。扉の音でこちらに気づいた彼女と視線が合う。
「こちらから挨拶するまでもなかったか」
「こんにちは、死神さん。えっと、どうされたんですか?お一人でここにいらっしゃるなんて…」
「久しぶりに街に寄った帰りに雨に降られてしまってな。ルティアの屋敷に行こうかとも思ったんだが、お前の家の方が近かったから寄らせてもらった。悪いが少し雨宿りをさせてもらえないか?」
死神の説明になるほど、と納得したリアラは頷く。
「わかりました、どうぞ」
「邪魔するぞ」
扉を大きく開けて招くリアラに一声かけ、死神は家の中に入った。
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