DMC×魔女パロ | ナノ


▽ 想いの歌 21

「〜♪〜、♪〜…」


歌い終えると、ダンテは隣りを見やる。自分の肩に頭を預け、リアラは静かに眠っていた。


「寝ちまったか」


仕方ないとは思う。連日の歌の練習に、祭りの日が近づくごとに増す、失敗してはいけないという重圧。それが今日の本番を終えようやく肩の荷が降りたのだから、安心したのと同時にどっと疲れがやってきたのだろう、眠ってしまってもおかしくはない。祭りを終えた後に無事に終わったことを祝って皆で酒を飲んだから、それも一因ではあるだろうが。


「……」


しばらくリアラの寝顔を眺めた後、足を組むと彼女を起こさないようにそっと両手で身体を支え、自分の脚に頭が乗るようにする。すやすやと眠る彼女の頭を撫でながら、ポツリとダンテは呟く。


「…バカだな、お前は。俺はお前の願いなら、何でも聞いてやるのに」


あんなに不安そうな顔をしなくても、彼女の願いなら拒否なんてしないし、いくらだって聞くのに。それ以前にいつだって彼女の願いは叶えられる範囲のもので、無理なことなんて言われたことがない。そして、いつも頼むような形で、強制なんて一度もされたことがない。だからこそ、叶えてやりたくなる。聞いてやりたくなる。


「こんなに優しくしてやるのなんて、お前だけだ」


他の奴にも、今まで契約してきた数多の魔女にだって、ここまで優しくしたことはない。自分は優しいと彼女は言うけれど、それは彼女が優しいからで。自分は、その優しさを彼女に返しているだけなのだ。頭を撫でていた手を頬へと移し、ダンテは静かに告げる。


「…もう、離れたくないくらいには、お前に惚れ込んじまってるんだ」


契約という関係であっても一人の人として対等に接してくれて、威張ることなどなかった。それどころか自分を大切にする言葉や行動ばかりで、自分の過去を知ってもそれを引っ括めて信じてくれた、受け入れてくれた。どこまでも暖かく、優しい。けれどその反面、過去の出来事のせいで自分のことは否定的で、自分のことで相手に迷惑をかけるんじゃないかと怯えていた。人の輪にあまり入らず、自分を大切にできない。そんな彼女を、守りたいと思った。大切にしたいと思った。


「あー、どうしてこんなに惚れ込んじまったかね…」


最初は気に入ったから契約しただけで、飽きたら契約を切ろうと思っていたのに。今では離れようという気持ちは全くなく、むしろ離れたくないと自分から思ってしまっている程だ。彼女と過ごす内に変化していた気持ちには気づいていた、けれども気づかない振りをしていた、気のせいだろう、と。けれど、今回のことではっきりと自覚した、彼女のことが好きなのだと。ここまではっきりと自覚したならばごまかしてもしょうがないだろう。


「まさかあいつらと同じように誰か一人を好きになるとはね…」


末の弟である双子が誰かを好きになったという事実には驚いたが、自分にはそんなことはないと思っていた。なのに、まさかこうして一人の魔女を好きになるとは想像もつかなかった。


「…まあ、好きになっちまったもんはしょうがないよな」


気持ちを偽っても仕方ない、ならば彼女の望む限り傍にいてやろう。…いや、彼女が望まなくても。


「…ずっと、傍にいて守ってやるさ」


身を屈め、誓うようにリアラの瞼に口づける。彼女を抱えて立ち上がると、ダンテはベランダの入口に向かって歩き出した。



***
2018.7.19

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