▽ 想いの歌 18
壇場に立つと、壁のステンドグラスを通して鮮やかな色を纏った日の光が床を照らしている。反対側から歩いてくるキリエと共に壇場の中央に立つと観客の方を向き、二人で頭を下げる。観客からの拍手を受け、キリエは前に、リアラは彼女の後ろに立つ。リアラは胸元に手を置き、深呼吸する。大丈夫、心はとても落ち着いている。静かな空間で、初めにキリエが音を紡いだ。
『冬を越え、春の息吹が大地に満ちる』
『一年の始まりを告げる時』
キリエが一つの歌詞を歌い終えると同時にリアラが音を紡ぐ。
『雪融けを待ちわびた人々は動き出す、期待に胸を踊らせて』
『大地を耕し、種を蒔く、命の誕生を願いながら』
『人々の願いと大地の恵みを受け、種は芽を出し、その身を輝かせる』
『我が子のごとく、人々は見守る』
『新しい命の誕生を』
交互に紡がれる二つの音は一つの旋律を作り出し、美しい曲を奏でる。
『夏に入り、輝ける光が大地と命を照らす』
『一年も半ばに差し掛かり、刻の流れを感じる時』
『人々は汗を流し、力を合わせて伸びゆく命を育てる』
『水の潤いを与え、日の暑さから身を守る』
『日は恵みと同時に厳しさももたらす、それは自然の摂理』
『自然に畏怖し、感謝し、人々は日々を生きる』
『育つ命と共に』
ステンドグラスの色に彩られた光が二人に降り注ぎ、神秘的な空間が生み出される。厳かな空気が満ちていく。
『秋を迎え、人々の思いが実を結び、大地の実りが私達を満たす』
『一年の中での、至福の時』
『皆で喜び、歌おう共に』
『大地の恵みへの感謝の歌を』
『皆で願い、歌おう共に』
『次の実りへの祈りの歌を』
『やがて大地は眠りにつく、新たな命を宿すために』
『私達は見守り、待とう。大地が目覚めるその時まで』
『そして心に刻もう、大切なことを』
『『私達は、大地と共に生きている』』
二人の歌声が重なり、講堂内に響き渡る。ゆっくりと溶けるように消えていく余韻の後、観客が大きな拍手を二人に贈った。キリエとリアラは並んで顔を見合わせると微笑み合い、観客に深く頭を下げる。拍手は鳴り止まなかった。
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