DMC×魔女パロ | ナノ


▽ 想いの歌 16

「…大丈夫か?」

「うん、大丈夫。いつもこうだから、慣れてるよ」

「…そういうことじゃないだろ」


はぁ、とため息をついてダンテは言う。大丈夫だと笑うリアラの顔は緊張でぎこちなく、どう見ても大丈夫だとは言えない。彼女の言う『慣れている』は『いつも緊張しているからこうなるのは慣れている』という意味だ、それは『慣れている』ではない、『そうなると知っている』ということ。


「周りを心配させたくないのはわかるけどな、パートナーである俺にまで隠す必要はないだろ」


彼女の表情が強張り、固まる。俯くように顔を伏せると、ようやくリアラは今の気持ちを言葉にした。


「……上手く、話せないもの。一緒に歌ってるキリエと話すのがやっとで、ルティアやディーヴァが来てくれても、返事をするのが精一杯。それだと、何も楽しくないでしょう?」

「だからこの部屋に一人で来たのか?」

「…うん。本番になれば私はこっちから祭壇に上がるから、どちらにしろこの部屋には来るし…」


そう言ってリアラは黙ってしまう。毎年こうして控え室に誰かが来る度にこうやって一人になっていたのだろう、街の人達が来た時もそうだろうし、長年の友人であるネロが来た時もそうだったに違いない、何となくそう思った。


「緊張するなんて誰にだってあることだろ、そのせいで上手く話せなくったって誰も責めやしないさ、お前は気にしすぎだ。むしろ、こうやってお前が気にして一人になったらそれこそ心配されるんじゃないか?」

「……」


黙ったままだったが思うことはあったのだろう、彼女は両手をきつく握りしめる。その華奢な手に向かって、ダンテは自分の手を伸ばす。


「!」


自分の手を包む大きな手に、リアラは顔を上げる。アイスブルーの目が、真っ直ぐこちらに向けられていた。


「…一人になろうとするな。お前が思ってる程、お前のことを迷惑だと思ってる奴はいない」


お前の周りには、お前のことを心配してくれるやつばっかりだろ?
優しく笑いかけてくれる彼に、その言葉に、その手の温かさに、強張っていた身体と心がゆっくりと解れていく。今のことだけではない、ずっと自分が心の底で思っていたことも掬い上げて答えてくれたような気がして。目を細め、リアラは笑う。


「…うん。…あのね、ダンテ」

「ん?」

「歌を歌うために祭壇に上がる時と歌を歌い終わって祭壇から下がる時、移動しやすいようにこの部屋とあっちの部屋の祭壇に繋がる扉が開いたままになってるの。そこから私の姿が見えるから…見守っててくれないかな?」

「…ああ、わかった」


目を細めて笑い、優しく頷いてくれた彼にリアラも笑みを返す。もう大丈夫だと、そう思えた。

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