DMC×魔女パロ | ナノ


▽ 月の満ちる夜に 9

「ん…」


ふと、意識が浮上する。ゆっくりと開けた目に映ったのは、白。肌に触れているそれはもふもふと手触りがよくて、何かの毛のようだ。それに、何だか温かいような…。


『お、起きたか』


その言葉に目が覚める。今までのことを思い出して慌てて起き上がると、こちらを見上げる青い目と目があった。


「あ、あの…」

『足、大丈夫か?』


言われて、左足の痺れがなくなっていることに気づく。傷を確認したら、少し深くは切れているものの、出血は止まったようだった。


「はい。少し深くは切れていますけど、歩けない程ではないですから」

『そうか』


よかった、と安堵の息をつく彼に、私はありがとうございます、と感謝の言葉を述べる。


「…あの。傷口に残っていた毒は、あなたが取り除いてくれたんですよね?毒を、操れるんですか?」

『察しがいいお嬢さんだな。お嬢さんの言う通り、俺は毒を操れる。魔界に生息するありとあらゆる植物の毒をな』


お嬢さんが眠ってる間に毒を取り除かせてもらったぜ、と彼は言った。


「助けて頂いた上に傷口の毒まで取り除いて頂いて、ありがとうございます。毒を操れるということは、木の属性、なんですね」

『ああ。闇との二重属性だ。そう言うお嬢さんも木属性の血が流れてるみたいだな、毒に少し免疫がある。ただ、『ゴールド』の奴等の毒にはさすがに効かなかったみたいだな』

「…よくおわかりですね」

『毒を取り除く時に傷口に触ったからな、わかっちまうんだ』


申し訳なさそうに言った彼に気にしなくていいのに、と思いつつ、私は話す。


「…母が、木の属性の魔女なんです。そのおかげで、私も少しだけ、毒に免疫があるんです。とはいえ、『ブロンズ』の魔獣の毒までですけど」

『なるほどな。けど、少しだけ、ってことは、お嬢さんの属性は違うってことか?』

「ええ。…私は氷の属性、ですから」


私の言葉を聞いた彼の耳がピク、と動く。


「私の父は、氷の属性の魔獣なんです。魔獣と魔女の結婚例はまれですが、父から受け継いだ属性もまれなもので…魔獣には数え切れない程、襲われています」

『……』

「ごめんなさい、関係のない話をしてしまって。…最後に一つ、いいですか?」

『…ああ』


彼が頷くのを見て、私は姿勢を正す。


「二百年近く前、今日と同じ満月の夜に、虫の魔獣に襲われた私を助けてくださり、ありがとうございました。あなたのおかげで、今、私はこうして生きています」


一生会うことなんて、ないと思っていた。けれど、今、こうして出会えたなら。ちゃんと、伝えたい。


「他の人より早く目覚めてしまった魔力を制御するのは大変だったけれど…その分、多くのことを学ぶことができました」

『……』

「…それに、今こうやって、また助けて頂いて…二度も命を、救われました。感謝しても、し足りません」


本当は、何かしら恩返しをしたいけれど、してもらったこと以上の恩返しが、思い浮かばない。
だから、せめて。


「私が返せる物は何もありませんが、せめて、お礼だけは言わせてください。…ありがとうございます」


深くお辞儀をする。これ以上迷惑をかけないように早くいなくなろう、そう思っていた。

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