▽ 想いの歌 12
グイッ
「!」
引っ張られるような感覚に、リアラの身体が傾く。ぽすん、と身体の寄りかかった部分と肩に感じる温かさ、それに上を見上げた時の青い目の距離の近さに、リアラは自分がダンテに寄りかかるような体勢になっているのだとわかった。
「ダ、ダンテ!?」
「…自分を卑下するなよ。これだけ努力してるんだ、もっと自信を持て」
「…っ!」
真っ直ぐに見つめられて告げられた言葉に、リアラは息を飲む。
どうして。
「…どうして、そんなに優しいの…?」
泣きそうな顔で細められた瑠璃色の目から視線を逸らさずに、ダンテは静かに口を開く。
「…お前が、優しいからじゃないか?」
俺は、それを返してるだけだ。
その言葉に、リアラは目を見開く。そして、以前ルティアに言われた言葉を思い出した。
『いつもリアラがみんなを気遣うから、優しくするから、こうやってリアラが困ってる時にはみんな、その優しさを返してくれるのよ』
「…そっか…」
自分がしたことが、こうやって返ってきているのか。あの時のルティアの言葉を改めて噛みしめて、悪いことじゃないんだな、とリアラは思う。
「…ありがとう、ダンテ」
「…ああ。緊張してたら寝ようにも寝られないだろ、少し落ち着いてから寝ような」
「…うん」
今だけは甘えさせてもらおう。身体を預けるように深く寄りかかり、リアラは目を閉じる。肩を掴む手の温かさが安心感をもたらしてくれて、緊張はゆっくりと解れていった。
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