▽ 想いの歌 11
「〜♪、〜♪〜、〜…」
夜空にリアラの歌声が響き渡る。その隣りでダンテは目を閉じて彼女の歌を聴き入っている。
『やがて大地は眠りにつく、新たな命を宿すために』
『私達は見守り、待とう。大地が目覚めるその時まで』
『そして心に刻もう、大切なことを』
『私達は、大地と共に生きている』
リアラが最後の歌詞を歌い終えると、ゆっくりと静寂が戻ってくる。空気に混じって消えていく音に耳を傾けていたダンテもゆっくりと目を開けた。
「今日もいい歌声だった。けど、ちょっと緊張してる感じがあるな」
「やっぱりわかる?」
「まあ、歌う前から緊張してたからな」
ダンテの言葉にリアラは苦笑する。
今日はいつもと違い、歌う前から緊張していた。−明日が祭りの日、本番だからだ。
「毎年、お祭りの前日になると緊張するの。どれだけ練習していても、どれだけお祭りで歌っていても、どこかで失敗するんじゃないかって不安で…」
「これだけ毎日練習してるんだ、そんなに不安がらなくても大丈夫だ。それに、失敗したとしてもお前を責める奴は誰もいない」
「うん…」
頷きつつも、リアラの顔には不安の色が浮かんでいる。ギュッ、とリアラは胸元で両手を握りしめる。
「でも、街の大事なお祭りで失敗することが怖くて…それに、大勢の人に見られるのには慣れられなくて、すごく緊張するの。見えないように後ろを向いていたんだとしても。…キリエはすごいよ、ちゃんと前を向いて歌ってるんだもの」
「……」
「ごめんね、変なこと言っちゃって。緊張すると、どうしても後ろ向きになっちゃうの。練習も終わったし、もう寝ようか」
誤魔化すように笑って、リアラが立ち上がろうと床に手をつけた、その時。
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