DMC×魔女パロ | ナノ


▽ 想いの歌 6

「こっそり夜中にベランダで練習しなくてもいいんだぜ?昼間にやったって俺は迷惑だと思わねえよ」

「ありがとう、でもずっとこれでやってきたから、今のままでいいかな。昼間だと仕事もあるし、練習に集中できないから。あ、でも、それだとまた夜中にダンテを起こしちゃうのよね…」


どうしよう…と悩むリアラにダンテも顎に手を当てて少しの間思案すると、何か思いついたのか口を開いた。


「なあ、もしお前が迷惑じゃなかったら、毎晩こうやって隣りでお前の歌を聴いてもいいか?」

「え?」


予想もしなかった提案に、リアラは目を瞬かせる。


「でも、それだとダンテの寝る時間が…」

「それくらいは自分で何とかするさ。それに練習って言ってもそう長々とやらないだろ?」

「まあ、そうだけど…」


コーラスの役を引き受けた最初の年は不安でしょうがなくって、昼間も夜中も歌の練習をしていた。けれど、寝不足になったり、喉を痛めてしまったりしたことから、無理をすることは止め、毎年様子を見ながら練習の時間を調整していって、今は夜中に一時間、と決めている。ためらいがちにリアラが頷くと、ならいいだろ、とダンテは笑う。


「こんな時でもなきゃなかなか聴けないだろうし。聴かせてくれよ、お前の歌」

「…ダンテが、そう言うなら…」


こうやって自分の歌を聴かせてほしいだなんて言われるとは思っていなかったけれど、ダンテが、そう望むのなら。


「じゃあ、これからよろしくな」

「…うん」


自分の返事に嬉しそうに笑うダンテに、リアラも自然と笑みを浮かべる。片膝を立て、その上に立てた片手に頭を預けるような体勢を取ると、何かの準備ができたかのようにさて、とダンテは呟く。


「さっそくで悪いんだが、今日は聴かせてもらえるのかな?」

「…え?」

「今日はまだ練習始めたばかりだろ?時間的にはもうしばらく練習するはずだ、違うか?」

「…よくわかったね」

「俺が起きてからそんなに経ってないからな、いつもと同じならそうだろうと思ってな」

「そっか…」


ここまで読まれていると少し恥ずかしく感じるが、毎晩同じタイミングで起きていたなら大体の予測はつくのだろう。それもそうか、と心の中で納得してリアラは頷く。


「いいよ、わざわざベランダにまで様子を見に来てくれたんだし、聴きたいって言ってくれてるのに聴かせないで家の中に戻ってもらうのも申し訳ないしね」

「お、そうか。じゃあ、さっそく聴かせてもらうかね」

「あまり期待しないでね」


苦笑しながら返すと、リアラはゆっくりと深呼吸をする。風のない静かな空間で、リアラの口が音を紡ぎ始めた。


「〜♪、〜〜、♪〜…」


彼女の人柄を表すかのように、穏やかな旋律が夜空に響く。音が止むまでの間、目を閉じ、ダンテは静かにリアラの歌に耳を傾けていた。

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