▽ 想いの歌 5
深夜、木々も動物達も寝静まった頃。家の中も静かな空気に包まれていて、リビングのお決まりの場所でゴロリと寝そべり、ダンテも眠っていた。
…〜♪、〜…〜♪…
『…ん…』
微かに聞こえた音に、ダンテはうっすらと目を開ける。顔を上げ、耳をそばだてて聞いてみるとそれは歌声だった。上から聞こえるということは、おそらくベランダから聞こえているのだろう。そして、そこにいるのは…
「……」
のそりと起き上がり、人型に戻るとダンテはリアラの部屋に向かう。念のために扉をノックし、部屋の主がいないことを確認すると扉を開け、中を通ってベランダへと続く階段を上がる。天井の扉を開け、ベランダに顔を出すと、音に気づいたのかリアラがこちらを見ていた。
「ダンテ」
「歌の練習か?」
「ええ。起こしちゃったみたいね、ごめんなさい」
「いや、いいさ。…最近、夜中にこっそりと歌を歌ってたから気になってたんだが、祭りの歌の練習だったんだな」
「…もしかして、毎晩起こしてしまっていたのかしら?」
だとしたら本当に申し訳ない。ごめんなさい、とリアラが俯くと、ダンテはリアラの頭をわしゃりと撫でる。
「謝る程のことじゃねえよ、気にするな。これでも結構お前の歌声気に入ってるんだぜ」
少し低めだが女性特有のソプラノで優しく穏やかに紡がれる旋律。心を落ち着かせるその歌声に、毎回聞いているうちに眠ってしまっている。ダンテの言葉にリアラはこてりと首を傾げる。
「そう、なの…?」
「ああ。いい声してるぜ、歌も上手いし」
「そう、かな…。ありがとう。ふふ、ダンテは褒めるのが上手ね」
「思ったことを言ってるだけだよ」
頬を染めて照れ臭そうに笑うリアラの隣りにゆっくりと腰を下ろすと、なあ、とダンテはリアラに呼びかける。
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