▽ 想いの歌 3
「リアラ、恥ずかしいのはわかるけど、別に隠す程のことでもないだろ。祭りでは重要な役割なんだからさ」
「そうなんだけど…重要な役割と言ってもね…本来はキリエが主役のお祭りなんだけど…」
歯切れ悪く話すパートナーに、ダンテは珍しいな、と思う。申し訳なさそうな顔で話すことはあれど、こんな風に複雑な表情で話すことはないからだ。話を促しつつも、長年の付き合いでリアラの性格を理解していたためか、仕方ねえな、とため息をついて、代わりにネロが話し始めた。
「その祭りな、街の広場にある教会で秋の豊作を祈るために歌姫が歌を歌うんだけど、毎年その歌姫としてキリエが出るんだ」
「へえ、すごいじゃないか嬢ちゃん」
「ありがとうございます。でも、それと同じくらい、リアラもすごいんですよ」
「言っとくけど、歌姫として歌うキリエの側でコーラスとして歌ってるのはリアラだからな」
「リアラが?」
ネロの言葉に目を瞬かせ、ダンテがリアラを見ると、リアラはぎこちなくもそうよ、と頷く。
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