▽ 想いの歌 2
ポットから琥珀色の液体が真っ白なティーカップに注がれる。湯気と共にいい匂いが広がるそれを、リアラはキリエの前に静かに置く。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
次いでネロの前に置き、ダンテの前に置いたリアラは最後に自分の席の前に置き、椅子に座る。
「冷めないうちにどうぞ」
「いただきます。…うん、美味しいわ」
「それはよかった」
コク、と紅茶を一口飲み、ソーサーの上に置いたリアラは話を切り出す。
「それで、今日はどうしたの?私に用事があるって言ってたけど…」
首を傾げるリアラにキリエはあのね、と話し始める。
「二週間後に私の住む街でお祭りがあるでしょう?毎年のことだけど、リアラに手伝いを頼もうと思って」
「そっか、あと二週間になるんだっけ。うん、わかった、去年と同じような感じでいいのかな?」
「ええ、お願いね」
「うん」
「祭り?」
頷くリアラに、隣りで話を聞いていたダンテは首を傾げる。
「あ、そっか、ダンテは知らなかったよね。キリエの住む街ではね、毎年、夏の終わりに秋の豊作を願うお祭りが行われるの。毎年、っていうわけではないけれど、時間がある時に私もお祭りの準備を手伝いに行っているの」
「へえ、そうなのか」
「うん」
「でも、ここ十年は毎年手伝ってくれているでしょう?」
「まあ、そうなんだけど…」
苦笑して答えたリアラに、再びダンテは首を傾げる。そこに、今まで黙って話を聞いていたネロが口を開いた。
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