▽ 想いの歌 1
「すみません、これを貰えますか?」
「これだね、まいどあり!今日はたくさん入荷できたから、おまけでもう一つつけておくよ」
「すみません、ありがとうございます」
「なあに、こっちの方が雪の魔女さんに世話になってるんだ、お礼ができる時はしておかないとな」
また来てくれよ!と見送る店の店主に頭を下げ、リアラは隣りにいたダンテに行こう、と声をかける。
「今日は何作るんだ?」
「トマトを買ったから、モッツァレラチーズと合わせてカプレーゼを作るよ。後は鮭のムニエルと…まだ暑いし、トマトの冷製スープを作ろうかな」
「美味そうだな」
「ありがとう、晩ご飯楽しみにしててね」
「ああ」
ダンテににこっと笑いかけたリアラは、後ろからかけられた声に足を止める。
「リアラ!」
「キリエ!どうしたの、ここに来るなんて珍しいね」
声をかけてきたのはキリエだった。こちらに控えめに手を振りながら歩いてくる彼女の隣りにはパートナーであるネロもいる。
「リアラに用事があってこっちまで来たの。そのままリアラの家に向かおうと思ったのだけれど、まだお昼時だし、ご飯を食べているところにお邪魔するのもいけないと思って、この町で寄り道をさせてもらっていたの。ここの紅茶は美味しいし、せっかくだから買っていこうと思って」
「そっか、気を遣わせちゃってごめんね」
「リアラが謝ることじゃないわ、私が一言もなくいきなり来てしまったのだもの、気にしないで。でもよかった、このままリアラの家に向かっていたらすれ違いになっていたかもしれないもの」
「そうだね、タイミングがよかったのかもしれないね。せっかくここで合流できたんだし、一緒に家に行こうか。私達、ちょうど買い物を終えたところなの」
「まあ、そうなの。私達もちょうど紅茶を買ってリアラの家に行くところだったの、一緒に行かせてもらえると嬉しいわ」
「そっか、じゃあ一緒に行こう」
「ええ」
リアラとダンテ、キリエとネロ、四人はリアラの家に行くために一緒に町の出口に向かって歩き出した。
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