▽ 月の満ちる夜に 7
「はあっ、はあ…」
もう何時間経っただろう。思ってたよりたくさんいて、ようやく終わらせたけど魔力は空に近い。
「この強さだと『ゴールド』か…全く、どこから噂を聞きつけてくるのかしら」
結局、いたのは三十体。一族全員で来たとでもいうのだろうか。
周りを見渡せば凍らせた蛇の魔獣達が倒れていて、地面は傷だらけ、木もいくつか折れてしまっていた。
「森が荒れちゃった…動物達にも迷惑がかかっちゃったし…」
今すぐにでも折れた木を邪魔にならないところに寄せたいし、傷だらけの地面を直したいけど無理そうだ。魔力が足りない。明日にするしかなさそうだ。
「家に帰ったらケルベロスに連絡しなきゃ…」
事情を話せば彼はすぐわかってくれるだろう。しばらくは牢で大人しくしてもらおう。
「早く帰ろう…」
集中力が乱れていたせいか、足に怪我をしてしまった。毒が仕込まれていたのか、痺れて上手く動かせない。
(また服がボロボロ…キリエに申し訳ないな…)
キリエに謝らなくちゃ、そう思いながら杖を支えにして歩き出した時だった。
『シャアアア!!』
「!!」
凍らせたはずの魔獣達の一匹が、氷を壊してこちらに向かってきていた。
(あれは最後に凍らせたやつ…強度が足りなかったんだ…!)
身体に力が入らない。振り向くのもやっとで、すでに魔獣は目の前にいた。丸飲みにしようと口を開ける魔獣に向かって杖を構えた、その時。
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