▽ 小さな君 11
「お前の言う通り、人型からあの姿になると、魔獣の姿からなるより魔力を使う。まあ、本当ならあの姿は必要のないもんで、上位の魔獣全員が使ってるってわけじゃないんだけどな。むしろ、俺や死神とか、ごく一部の奴らしか使ってないだろうし。それ以前に人型になるのが珍しいことだからな」
俺ら兄弟は半分人間、半分魔獣だから、どちらも元の姿だといえるけれどな、とダンテは続ける。
「俺の場合は興味本位でやったらできたもんだから気分で使ってるだけで、あの姿は力を抑えてる状態だから、本当なら常に魔獣の姿でいる方が守るにはいいんだけどな。まあ、死神くらいになると別なんだろうが」
「興味本位でやってみてできるだけでもすごいと思うけど…」
それだけ彼が強いのだと改めて感じる。リアラの呟きに、はは、ありがとな、とダンテは笑って返す。
「でも、それならどうしてあの姿に…」
自分の考えが当たっていたのなら、なおさら、どうして人間の姿になったのか疑問に思う。元の魔獣の姿でも助けることはできただろうに。首を傾げるリアラに、あー…と今度は頬をポリポリと掻きながら、ダンテは答える。
「あの姿から魔獣の姿を介して人型に戻ってたら、時間がなかったってのはある。けれど、それよりも何よりも、人型で助けた方がいいと思ったんだ」
「…え?」
「魔獣の姿で助けることもできなくはない、背中で受け止めるなり、魔術を使うなりすればいいからな。ただ、魔獣の姿で背中で受け止めたら、落ちてきた衝撃でお前の身体に負担がかかるだろ。受け身も取れない状態だったし…なら、人型で受け止めた方がお前の身体に負担がかからないってとっさにそう思ったんだよ」
「ダンテ…」
あの短い時間の中で、彼はそこまで考えて、助けてくれたんだ。本当に、優しい人だな、そう思い、リアラは微笑む。
「本当に、ありがとう。いつも迷惑かけちゃってごめんね」
「パートナーなんだから当たり前だろ。それにこの場合は迷惑じゃなくて心配、だろ?」
「ふふ、そうだね。心配させてごめんね、ダンテ」
「ああ」
微笑む彼の眼差しは優しく、温かい。彼がパートナーで本当によかった。
「そろそろ晩ご飯の準備しないとね、もう少し待っててくれるかな?」
「ああ、美味い飯頼むぜ」
「うん」
頷き、リアラはキッチンへと向かった。
prev /
next