▽ 小さな君 10
ゆっくりと電話の受話器を置いたリアラはダンテの方を振り返る。
「あの子、無事に保護されたって。ケルベロスのところでしばらく様子を見てから仲間のところに帰してくれるみたい」
「そうか、よかったな」
「うん」
笑顔で頷くと、リアラは座ってこちらの様子を見ていたダンテに歩み寄り、手を伸ばす。
「身体、大丈夫?どこかおかしかったりしない?」
「ああ、どこも悪いところなんてないから、そんなに心配するな」
頬に触れたパートナーの手に自分の手を重ね、安心させるようにダンテは笑う。リアラもよかった、と安堵の笑みを浮かべる。
「あの時、何かが弾けたような音がしたから、自分にかかった魔法を破ってまで助けてくれたんだってわかって…無理をして身体に負担がかかってるはずだから、心配だったの」
「多少魔力は使ったが負担って程ではなかったからな、問題ない。それに少し魔力を込めただけで解けたからな、今日中には解けてたと思うぜ」
「そっか…」
予想外のことで彼にかかっていた魔法が解けたが、早く戻れてよかったと思う。ダンテが元の姿に戻った時のことを思い返していたリアラはふと、そういえば…とあることを思い出す。
「ダンテ、一つ聞きたいことがあるんだけど…」
「ん?何だ?」
ダンテと向かいあうように座り、リアラは気になったことを尋ねる。
「ダンテ、普段は小さな魔獣の姿になっている時はその姿になる時もその姿から戻る時も、必ず元の魔獣の姿を介しているでしょう?たぶん、人間の姿から小さな魔獣の姿になるのは元の魔獣の姿からなるより魔力を使うからだと思うけれど…けど、私を助けてくれたあの時は小さな魔獣の姿から人間の姿になってたよね。どうしてそうしたの?」
その問いにダンテは目を見開くと、あー…と気まずそうに目を逸らす。
「よく見てるな、お前…」
頭をガシガシと掻き、どう答えようかと迷いつつも、ダンテは話し始める。
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