▽ 小さな君 8
「えっと、この辺りのはずなんだけど…」
『リアラ、あれだ。木の上にいる』
「…あ、本当だ」
ダンテが指を差す方にリアラが目を凝らすと、木の上、生い茂る枝の間に隠れるように小さな鳥がいた。紺色の身体をした鳥は見た目は普通の鳥に見えるが気配は常界の動物達と違っていて、すぐに魔獣なのだとわかった。こちらに気がついたようで、小さな魔獣はピッ、と声を上げて身体を震わせる。
「かなり怯えてるね…」
『まあ、普段なら『ノーマル』は他の奴らに見つからないように隠れて暮らしてるからな。それに今目の前にいるのは魔女と『プラチナ』の魔獣だ、あいつからしたら恐怖しか感じないんだろうよ』
「うーん…」
少しの間唸りながら考えこんでいたリアラはどうするか決めたのか、ダンテに向き直る。
「ダンテ、ちょっとここで待っててくれる?私一人で行ってみる」
『一人でか?』
「うん、本当はダンテに行ってもらった方が話は通じると思うけど、同じ魔獣相手だと余計怯えちゃいそうだし…会話はできなくても言葉は通じるはずだから、私一人で行った方が怖がられずに済むと思う」
『そうか…わかった。けど相手は俺と同じ魔獣だ、気をつけろよ』
「うん」
ダンテが翼を羽ばたかせて肩から離れると、リアラは杖に乗り、空へ飛び立つ。魔獣の乗る枝に降り立つと、身を屈め、怯えさせないようにリアラはゆっくりと手を伸ばす。
「おいで」
『ピ、ピィィ…』
「大丈夫、あなたを傷つけたりしないよ。ちゃんと魔界に帰してあげるから。だから、怖がらないで」
『ピ、ピ…』
「ね、おいで」
促すようにリアラが優しく魔獣に笑いかけた、次の瞬間。
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