▽ 知らない感情 22
「三日もどこ行ってたんだよ、リアラ、すごい落ち込んでたんだぞ」
「ちょっと魔界にな。その口振りだと坊やと嬢ちゃんは事情を知ってるみたいだな」
「三日前に仕事で来たリアラに会ったからな。魔獣に髪切られてってのは過去にも何度かあったからそれ程驚かなかったけど、元気がなかったし、あんたが側にいなかったからおかしいと思ったんだ」
「そうか、過去にも何度かあったのか…」
何か思うことがあったのか真剣な面持ちで呟いたダンテに、珍しいなと思いながらもネロは再び問う。
「で、どうして魔界なんかに行ったんだよ」
「あいつの母親に薬を作ってもらいに行ってた。薬を作るのが得意だってあいつから聞いたからな」
「ああ、なるほど。リアラの母親か…父親もそうだけど、会ったことないんだよな。写真は見せてもらったことがあるけど」
「そうなのか?」
「ああ。リアラが魔女として一人前になって数年経った頃に、両親は魔界に移り住んだって聞いた。その頃は俺もキリエもまだリアラに会ってなかったから、知らなくて当然なんだけどな」
「ふーん…でも、それなりに長い付き合いなんだな」
「まあな、もう五十年くらいにはなるし…多少はリアラのことも知ってるつもりだ」
だから、とネロは普段見せることのない真面目な顔で続ける。
「リアラを泣かすようなことだけはするなよ。もしそんなことをしたら…俺は許さないからな」
「…わかってる。そんなことをしたらお前だけじゃなく、嬢ちゃんにも怒られそうだからな」
「クレドもな」
「はは、そうだな」
笑って返してはいるが、返事をごまかさなかったのを見るに、ちゃんとわかっているのだろう。ネロはテーブルに肘をつき、ダンテを見上げる。
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