▽ 知らない感情 21
コンコン、と扉をノックするとはーい、と耳に馴染んだ声が聞こえ、同時にぱたぱたと軽い足音が近づいてくる。扉を開けたキリエはリアラの姿を見留め、笑顔を浮かべた。
「こんにちは、キリエ」
「いらっしゃい、リアラ。あら、ダンテさんもいらっしゃったんですね」
「おう。邪魔するぜ、嬢ちゃん」
「ええ、どうぞ」
笑顔で迎え入れてくれたキリエについてリビングに行くと、テーブルに肘をついてネロが座って待っていた。ダンテの姿を見留めるや否や、ネロはげ、と眉を顰めた。それにキリエは気づかなかったようで、リアラの方を振り返る。
「私、お茶の用意をしてくるわ。リアラとダンテさんは座ってて」
「あ、私手伝うよ、キリエ」
「え、でもお客様なのに悪いわ」
「気にしないで。それに、紅茶とお菓子を持ってくるとなれば行き来しないといけないでしょう?二人で持ってくれば一度で済むし」
ね?と微笑むリアラにキリエも微笑んで頷く。
「そうね、じゃあお言葉に甘えて手伝ってもらおうかしら」
「うん。あ、そうだ、お土産にキリエに町の紅茶買ってきたの、よかったら飲んで」
「本当?ありがとう。あの町の紅茶は美味しいから嬉しいわ。せっかくだから今飲みましょうか」
「本当?じゃあ、今持っていくね」
バスケットから茶葉の入った袋を取り出し、リアラはバスケットをダンテに手渡す。
「ダンテ、キリエと一緒にお茶の用意をしてくるから、これ預かっててもらえるかな?」
「ああ、わかった」
ダンテがバスケットを預かると、お願いね、と言ってリアラはキリエの隣りに並んでキッチンへと向かう。「今日はミルクレープを作ってみたの。リアラ、好きだったでしょう?」「ミルクレープ!?嬉しい、楽しみ!」楽しそうに話す声が遠ざかっていき、リビングにはダンテとネロの二人だけになった。
ようやくネロが口を開く。
「おっさん、リアラについてきたのかよ」
「何だ坊や、パートナーの俺がリアラについてきちゃ悪いか?」
「あんた、来るたびに俺をからかうだろ。あと、いい加減に坊やって呼ぶのやめろ」
「坊やは坊やだからな」
「マジで腹立つ…」
肩を竦めてからかうように言うダンテにネロの不機嫌度が増す。はぁ、とため息をつき、ネロは向かいに座ったダンテに尋ねる。
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