▽ 知らない感情 19
「よし、終わり」
最後の一枚を拭き終え、リアラは一息つく。食器を棚に仕舞っていると、キッチンの入口にダンテがやってきた。
「リアラ、午後も配達あるのか?」
「うん、一件だけ。キリエのところに行くの、染め物用の薬草を頼まれてるから」
「ああ、あの嬢ちゃんのところか」
「うん」
今日の配達は午前に集中していて、午後は珍しく一件だけだ。彼女に頼まれた配達の時間は三時。まだまだ時間がある。
「それに、キリエにお茶に誘われてるの。だから、キリエのところに行く前に町で紅茶を買っていくわ」
「そうか。それは俺もついていっていいやつか?」
「一緒に行ってくれるの?」
「お前がいいなら」
「うん、いいよ。ふふ、何だかこうやって一緒に行くの久しぶりだね」
「そうだな」
三日という短い期間とはいえ本当に寂しかったのだろう、嬉しそうに笑うリアラにダンテも優しい笑みを返す。
「終わったら教えてくれ、行く前にやることがあるからな」
「?何をするの?」
「後で教える」
「わかった」
首を傾げつつもリアラが頷くと、ダンテはリビングに戻っていく。何だろうと思いながら、リアラは片付けを再開した。
prev /
next