▽ 知らない感情 14
「俺が怒ったのは、お前が自分のことを大事にしないからだ。前に魔獣に攫われた時もそうだったが、お前、自分のことよりも他人のことを心配してただろ」
「う、うん…」
「五日前の仕事の時もそうだ。依頼人の娘逃して代わりにお前が狙われたってのに、お前は自分の心配をせずに、喰われた奴らのことで怒ってた。依頼人に依頼完了の報告をしに行った時も、自分の仕事が役に立つかもしれないって依頼人に話してるし、帰りも依頼人の娘が助かってよかった、とか、心配させたのはよくなかった、とか他人のことばっかりで…自分のことはどうでもいいのか、って少し苛立った」
「……」
「…それに、お前の髪が切られたのは俺が話しかけて隙を作っちまったからだ。魔女にとって髪は大事なものだ、それが切られてその上喰われたとなれば、原因を責めたくだってなるはずだ。なのに、お前は少しも俺を責めない。それどころか当たり前のように自分のせいにしてて、何でそうなんだ、って思ったら我慢できなくなって…つい、ああ言っちまった」
「…そっか」
「…悪かったな、あんな言い方しちまって」
「何でダンテが謝るの?私を心配してくれたんでしょう?…あ、これも何でそうなんだ、って思われちゃうのかな?」
「……」
本来の長さに戻ったリアラの髪を櫛で梳いて、ダンテは手を下ろす。
「…終わったぞ」
「あ、ありがとう。…うん、やっぱりいつもの髪が一番落ち着くわ」
「…そうか」
自分の髪に触れるリアラの肩からタオルを取り、バスルームに置いてこようとダンテは立ち上がる。
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