▽ 知らない感情 13
「…不安、だったの。ダンテが戻ってきてくれるか」
床に置いていた香水瓶を取ろうとしたダンテの手が止まる。
「ダンテは何かと気遣ってくれるから、つい甘えてしまっていたのかもしれない、頼ってしまっていたのかもしれない。だから、呆れられてしまったんじゃないかって…」
「……」
「それに、私はダンテに何て言って謝ればいいかわからない。自分のことで怒らせてしまったのはわかる。けれど、どの部分でどういう風に怒らせてしまったのかわからない。謝りたいって気持ちだけがあって、言葉が見つからない」
ギュッ、と膝の上で重ねた手に力がこもる。
「ダンテの気持ちがわからなくて、ごめんね。ごめんね…」
「……」
しばらくの沈黙の後、はぁー…と長いため息が後ろから聞こえた。ビクッと肩を震わせたリアラの頭を、大きな手がぐしゃぐしゃと掻き回す。
「っ!?」
「お前なぁ…他人の気持ちなんて、そんな簡単にわかるわけがねえだろ」
乱してしまったリアラの髪を手櫛で整え、ダンテは香水瓶を手に取る。
「時間も遅いし、やりながら話すぞ」
「え、あ、うん…」
リアラが頷くと、リアラの髪に手を添え、香水瓶の中身を吹きかける。濡れた部分を櫛で梳かしながら、ダンテは話し始めた。
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