▽ 知らない感情 11
「………」
「………」
重い空気の中、カチャカチャと食器の音だけが響く。無言で食べ進めるダンテを、リアラも無言で見つめる。
家の中に入って食事が用意されていることに気づいたダンテに食べるかどうか尋ねると食べると返事が返ってきたので二人でテーブルを囲んでいるわけだが、彼の「いただきます」の一言以降、会話はない。迷惑だっただろうか。
「ご馳走さん」
「あ、えっと、お粗末様です…」
食べ終えたらしいダンテの一言を聞き、後片付けをしようとリアラは立ち上がる。が、それをダンテが止めた。
「リアラ、片付けは後にして、ちょっとこっちに来てくれ」
「あ、うん…」
リアラは立ち上がってリビングに向かうダンテについていく。中央に白いカーペットが敷かれたそこは、いつも二人で話をする場所だ。ここで座って待っているように言ったダンテは、ある物をリアラに手渡す。
「これ、持っててくれ」
「?うん」
バスルームへと向かった彼を見送り、リアラは手元の物を見る。麻の袋に何か入っているようで、小さいがそれなりに重い。何が入ってるんだろう、そう思ったリアラはふと感じた魔力に懐かしい感覚を覚えた。
「これ、もしかして…」
「待たせたな」
その時、ダンテがバスルームから戻ってきた。手にはなぜかタオルと櫛を持っている。思わず彼の方を振り返り、リアラは尋ねる。
「ダンテ、これ、もしかして…」
「ん?ああ、気がついたか。説明は後でな」
出してみろ、と言われ、リアラは袋を開けて中を取り出す。透明なガラスでできたそれは小さな香水瓶のようで、中には鮮やかな緑色の液体が入っている。
見覚えのあるそれに、やっぱり…とリアラは呟く。
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