落ちた先-11-
「……」
廊下の窓から、サクラ迷宮に向かう白野を見送る。桜に呼び止められたらしく、桜の樹の前で話す彼女を空は見つめる。
(こうやって、関わるなんて思ってもみなかった…)
本来の聖杯戦争なら、決してありえないこと。あっては、ならないこと。
(誰か一人に思いを向けてはいけないのに…彼女と話せたことを、嬉しく思ってる)
自分が助けたいと思った彼女の手助けができることが嬉しくて。気持ちが顔に出てしまいそうで、空は口を引き結ぶ。
(だめだ、私は代理観測者…。聖杯戦争を見て、ムーンセルに報告するのが役割。この気持ちは出しちゃいけない)
役割を超えてはいけない。あくまで自分は運営側の一人、この異常事態に表側に戻るために力を貸しているに過ぎないのだから。表側に戻れば、元の関係に戻るのだから。
(割り切れ、自分を出すな)
グッ、と窓についた指に力を込め、空は外の景色に背を向けた。
***
2017.5.21