落ちた先-8-
二階、生徒会室。戻ってきた白野の報告を聞き終え、レオはまあいいでしょう、と頷く。
「現在の生徒会メンバーは全体の半数を超えました。今はそれで良しとしましょう」
人員不足はいずれ解決するでしょう、と続けたレオに、そのことなんだけれど、と白野は口を開く。
「マスターではないんだけれど、もう一人、生徒会の手伝いをお願いした人がいるんだ」
「マスターではない?サクラのようなAIですか?」
「ううん、彼女は…」
白野が告げようとしたその時、コンコン、と部屋の扉を叩く音が響く。失礼します、と一声かかった後に扉が開き、一人の女性が姿を現した。彼女は白野を見つけると申し訳なさそうに眉を下げる。
「すみません、遅くなってしまいました」
「ううん、大丈夫。今ちょうどあなたのことを話そうと思っていたところだよ」
「そうですか、それならよかったです」
「もしかして、岸波さんがお手伝いをお願いしたのは…」
「ええ、私のことよ。驚かせてごめんなさい、桜」
驚く桜に一言詫びを入れると、空はレオへ視線を移し、深々と頭を下げる。
「初めまして、私は空といいます。おそらくもうお気づきでしょうが…」
「ええ。ガウェインの様子から察するにサーヴァント、ですね」
「はい。ですが、私は運営側のサーヴァント…ムーンセルをマスターとし、ムーンセルの代わりに聖杯戦争を観測する『観測者』という身です。貴方方マスターを害することはありません」
「ムーンセルがマスター…だから貴女の側にマスターの姿がないのですね」
「はい。ですが、今は魔力供給のためのパス自体は繋がっていますが、こちらから連絡はできない状態です。連絡ができたなら、すぐにこの状況から脱せたのでしょうが…お力になれず、すみません」
「貴女のせいではありませんよ。この異常事態では仕方のない事です。…それで、白野さんの話によると、貴女も手伝ってくださるとの事でしたが」
「はい。私の知り得ることは全てお教えしますし、必要であれば戦います。とはいえ、私の能力自体戦いにはあまり向いていないのですが」
なので雑用にでもお使いください、と続けた空にそうですか、とレオは頷く。
「わかりました。見ての通り、今は人手が足りません。貴女の言葉に甘えさせて頂きます」
「はい。これからよろしくお願いします」
再び頭を下げた空にこちらこそよろしくお願いします、とレオは返す。