落ちた先-4-

「これで全員、かな?」

『ああ。校舎の中は全て回ったし、他に残っているマスターはいないだろう』

「そうだね、じゃあ生徒会室に戻ろうか」


アーチャーの言葉に頷き、薄い茶色の髪を揺らしながら白野は二階へと続く階段へ向かう。階段の手すりに手をかけた時、霊体化して後ろについていたアーチャーが足を止めた。


『む?』

「どうしたの、アーチャー?」

『…微かにだが、外にサーヴァントの気配を感じる』

「サーヴァントの?誰のサーヴァントだろう…」


首を傾げる白野にアーチャーは問いかける。


『どうする、マスター?』

「行ってみよう。もしかしたら今の状態について意見が聞けるかもしれない」

『了解した。だが相手はサーヴァントだ、気を抜かないように』

「わかった」


こくりと頷き、白野は身を翻す。玄関の扉に手をかけ、ゆっくりと開けると外へと足を踏み出す。アーチャーもそれに続く。
夕焼けで赤く照らされた外は人影がなく、しん…と静まり返っている。きょろきょろと辺りを見回す白野にアーチャーが声をかける。


『左だ、マスター』


彼の言葉に従い白野が左側を見やると、満開の桜の木が視界に入った。はらはらとピンク色の花びらを散らせる木の周囲には誰もいないように見える。


「ここにいるの?」

『ああ。姿は見えないが、霊体化してそこにいる。…あちらも私達に気づいているようだ』

「…何か御用ですか?」

「!」


こちらに向けられた言葉と共に姿を現した人影に、思わず白野は身構える。
木の前に現れた人影−女性は外見は20代半ばといったところだろうか、緑の宝石を光に透かしたような色の目に、灰色に少しだけ青みを加えたかのような髪。着ている服はゴスロリといえばいいのだろうか、そんな雰囲気の服に、袖に錠前付きの鎖、襟元には鍵付きの鎖という、何とも奇妙な衣装だ。
何も言わないこちらを不思議に思ったのか、真っ直ぐこちらを見つめていた彼女は首を傾げた。




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