▼ 結んで開いて(銀魂)
俺嫌いだもん
伸ばした指はそう言われて大きな手の平に包まれた
なんてことはない
ただ約束したから指切りしようと言っただけだ
私の星にはなかったちょっとだけ優しい約束の仕方に銀髪の雇い主は応じなかった
「ナンデ?」
「それあてになんねーもん」
握られた手の平が手遊びのように広げられたり閉じられたりしている
間接ひとつ長さが足りない手の平は簡単に開いて閉じられる
「ナンデ?」
「昔なー、お前より餓鬼の時によくしたんだよ。ヅラとか高杉とかと死ぬまで一緒にいようとか、それから」
そこで口を閉ざした銀時は神楽の手を一度ぎゅっと握った
言わなかった何かに大事な何を隠しているのを神楽はわかっていたから聞かない
無理矢理聞いたってこの男は何も言わないのを知っているから
大事なことほど銀時は口出さない
沈黙の落ちた部屋に定春の寝息が響いていた
馬鹿みたいな平和な日常の中で銀時だけが日常から逸脱して過去にいるのに気付いて銀ちゃん、と声を上げた
「まあ、結局どれも」
こちらを見た瞳はもう日常に沈む銀時の目だったが一瞬かちあっただけで離された
「守られなかったからな」
そう言って離された手の平に過去の残滓がこびりついていて少しでも見えたらいいのにと遠い目で窓の外を眺めている銀時を凝視しながら少しだけ神楽は悲しくなった
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