素敵な頂きもの


茶こちゃんに書いてもらいました♪

緒方さんに書いて頂きました、ミンクちゃん&ハヤタのコラボ小説です。
子どもらしいハヤタの要望に高等な会話のやり取りのギャップが実に素敵です*



昼下がりミンクがいつものお店から出た時だった。
「あの」
と後ろから声をかけられた。
振り返ると、店内で見た客だ。一緒に店を出てきたのだろう。
声の主は頭からフードをかぶっている。
こんな知り合いはいない。そもそもこの町にまだミンクの知り合いが少ないのだけれど。
若干の戸惑いとともに
「はい……」
と返事をした。
変声期前だろう高い声に、何よりミンクよりも背が低い、この人物は年下だろ思い、警戒する必要はなしと判断された。
「さっき話しているのを聞いて……。魔法の薬を作ってるんですよね?」
その声は、希望と羨望とが入り混じったようにも聞こえた。フードではっきり顔は見えないけれど。
「え、うん。そう、だけど」
本来なら自分から作っているのを公表しないのだけど、少し切実そうにも聞こえたので素直に答えた。
「ほんとですか!じゃあ作ってもらいたいものがあるんです。できるならでいいんです!俺、ずっと前からの夢で」
と、一気に先ほどのおとなしい態度と一変して、フードの少年は興奮気味にミンクに詰め寄る。
「えと……何でも作れるわけじゃないよ。魔法とは違うから」
自分で言ってすこし現実を目の当たりにしたけれど、それでも自分の今の力を過信してはいけない。

「あの、俺ハヤタって言います」
と目の前の少年は砂色のフードに手をかけた。下に見えるチュニック風の服の深い緑色とよく合っている。ゆったりとした服がさらに幼さを強調している。
フードの下からのぞいたのは若芽を思い起こす柔らかそうな髪の毛に、大きな目が特徴の、想像した通りまだあどけなさの残る少年だった。
大きな瞳はミンクに真摯に向けられていた。
一拍のちミンクは気が付いた。
少年の髪からのぞく耳が普通――いわゆる人間とは異なる種族の物であると。
横に長く特徴的なフォルムは、ミンクも知っているエルフかもしれない。
祖母から聞かされた話とほんの中や歴史の中での知識しかないので、実際目にするのは初めてで確証はない。それでももし、エルフであったなら。
そう思うが早いか、少年ハヤタのフードを再度頭にかぶせると手を掴み、その場所を逃げるように歩き出した。
「こっち、私の家で話しを聞くから」
「え?え?」
戸惑いを隠せないままハヤタはミンクに引かれて猫の額通りを抜け、やがて人もまばらになった頃になってミンクは歩調を緩めた。
「この細い道を上がっていけばもうすぐだからね。大丈夫」
何が大丈夫なのかハヤタには疑問だったが、ミンクが安心させようと言っているのが感じられ素直について行った。
辺りは暖かな日差しをうけて、野草がのび元気に上を目指していた。そんな中を二人の少年少女は進んでいった。

「ノーチィただいま。帰ったよ」
そういいながらミンクは自宅の扉を開けた。
数秒後ミンクの黒いワンピースから伸びる足元に同じく黒い猫がすりすりと身体を摺り寄せてきた。
部屋の中にいたのだろう音もなくやって来た。
「わあ、猫だ!」
「お客さんだよ」
そう紹介すると黒猫ノーチィはハヤタの周りを一周ゆっくり回るとミンクの後ろに座り様子を窺うような目でみている。
「おいで」
そうハヤタが手を出すと数歩歩み寄ったがそこから動かない。
慎重派だ。
ハヤタは少し粘ったがノーチィが動かないのであきらめて手を下げると、タイミングを見計らったかのように近寄ってきた。



「あの、ハヤタ君て……エルフ?もしかして」
少しためらったのち、ミンクは慎重に聞いた。
「はい」
驚いた。ショックを受けたといってもいい。
初めて見たし、エルフの存在はもう何十年か不明となっている。
それなのに、こんなにあっさり街中で声をかけられるとは。
この国以外ではもしかしたら今もどこかで暮らしているのかもしれないけど、外の情報は詳しくないのでわからないが、それでもこんな場所で偶然出会うなんて確率はそうとう低いと思えた。
エルフと知れたらもしかしたら奇異の目や厭忌の感情を向けてくるかもしれない、そんな実情があるからだ。この国では。
そんな内情から、数少ないエルフがこうして声をかけてくれたのだからとミンクはできる限りのことをしようと心の中で燃え上がった

「どんなものが必要なの?あ、私の名前言ってなかったね、私はミンク。よろしくね!お客様」
ミンクの内心などわかりもしないハヤタにとっては、張り切って聞いてくれる女の子は少し不思議にも見えた。
若干言いよどむ姿にミンクは何やら大それた物を想像めぐらしていた。
「えっと……ビームを出せるようになりたいんです」
ミンクはハヤタの視線とバッチリあったがその眼はやはり真剣であり、期待が込められている。
「ビーム?」
ミンクは戸惑いを隠せない声色で聞いた。なんだろう。出すと言うからには声なのだろうか?
「ビームって何?どんなもの?音?」
とミンクは疑問をそのままぶつけた。
自分の知識不足もあるが、もしかしたらエルフ特有の何かかもしれない。
「え……何って言われても」
聞かれたハヤタの方もどう説明をしていいかを悩んで戸惑いながら口にした。
「こう光が」
と身振り手振りを交えて。
「光るの?光ればいいの?」
「いや……光って当たると、熱いのかな……?」
なぜか答えている方のハヤタも疑問形なのが気になる。
「熱いのなら、火を噴けばいいの?」
「火じゃないんですよ」
「?」
ミンクの頭には疑問符が浮かんでばかりで、想像がつかない。
「えっと、こう」
再度ハヤタが手振りをする。
「どこから出るの?口から?」
「え!!」
「え?」
まさかこれも驚かれる質問とは思わずミンクもただハヤタと見つめ合う事になった。

「額とか手とかでしょうか」
たっぷり間をおいてからハヤタが答えた。
「そんなところから熱いものが出たらヤケドしないの?ヤケドしないくらいの温度?お風呂くらい?」
ミンクの疑問は尽きない。むしろ増す一方だった。
「そんな!もっと熱いです。悪をやっつけれるくらい」
「……」
具体的な温度がわからない。
ここから少しばかりハヤタに紙を渡して絵を描いてもらったりした。ミンクはビームの視覚情報を少しでも得るために。

「たとえば、虫眼鏡で太陽の光を集めたら燃えるって感じかな?」
ミンクが精一杯導き出した結果を言った。
「原理は僕にはわからないのですが、イメージではそんな感じでしょうか。灯台の光が見た目に近いかもしれません。僕もまだビームを出したことないし、実際間近で見たことがないんですが。できますか?本当は燃え上がる正義の心で出ればいいんですけども」
「う、うーん。正義の心とか、精神論方面は魔術師の人が専門分野だと思うんだけど。でも」
「でも?」
ミンクはちょっと考えて、自信ある表情をつくって言った。
「私はなんと、装備アイテムも作れます」
キラキラとハヤタのまなざしが輝いていく。
「装備アイテム!?魔法の」
魔法の、で一瞬ミンクはためらったが、言い切った。
「悪い事には使わないと約束するなら、作りましょう」
「約束します!!」
今日一番の大きな返事が返って来た。

ミンクは小さなレンズや鏡を使い、太陽光を一点に集めるブレスレットタイプのアイテムを作り、光が当たった場所が上手くすれば燃えるくらいの装置を頭で描いていた。燃えなくてもかなり熱くはなるので、けして悪戯では使用してはならない程度のものだ。蓄光する石や熱をため込む物を装飾するのも面白いかもしれない。
光の色を緑色に工夫すればさらに喜んでくれるかもしれない。
欠点としてはよく晴れた日にしか使えない事だ。
雨の日や曇りの日はエネルギーを充電しているという事にしよう。なんて、とこまで考えて楽しくなってきた。

ハヤタは喜んで、子供でも装備できますか?と、前のめりになるくらいの勢いで聞いてきた。
「装備できるかはハヤタ君しだいよ。魔法のアイテムはすぐには出来ないけど、がんばって作るから」
ハヤタはそれを聞いて、
「俺、良い子にして待ってますから!」
それからお茶をして、ノーチィを抱っこしたりして遊んだあと、また来ることを約束してハヤタは足取りも軽く帰っていった。

「じゃあ、正義の心を形に変えるアイテム作らないとね」
そう呟いたミンクの顔はハヤタと同じくらいにこやかだった。

おしまい。




少年らしいハヤタが可愛らしく、一生懸命ハヤタの期待に応えようとしてくれるミンクちゃんが優しく癒されますね〜♪
書いて頂けた事は勿論、緒方さんの世界観に触れて頂けた事がもうたまらなく嬉しくて…!
違和感無いコラボっぷりに、緒方さんの力量の高さを改めてひしひしと感じます。やっぱり緒方さんの書かれる文が大好きです!!
素敵なコラボ小説を本当にありがとうございました♪




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