お八つどき、食堂が落ち着くこの時間は、一日の中でも心休まるひと時だ。

そんな時間を、今日は蜜璃さんしのぶさんと共に甘味を嗜み楽しんでいた。この甘味を食べる会は時々食堂にて開催されていて、料理が趣味の蜜璃さんと南蛮料理の話をしたり、薬学に精通しているしのぶさんと体に良い食材の話をしたりなど、充実した時間となっている。

のだけれど


「ねぇ、名前ちゃん!結局の所、冨岡さんはどういう関係!?」


今日は蜜璃さんがそわそわと心ここにあらずだな、と思っていた。そして意を決したように前述のようなことを聞いてきたため、目を瞬く。しのぶさんの方を見るとあらあらと苦笑いをし、お茶を口元へ運んでいた。


「あの、どういうとは…?」


どうして蜜璃さんがそんな事を言い出したのか、皆目検討がつかず問いに問いで返してしまう。そんな私の様子に、一瞬あれ?と首を傾げる蜜璃さん。けれどすぐに気を持ち直したのか、ぐっと拳を作って勢いよく話し出す。


「私、聞いたの!先日の大型任務の前、人のいない食堂で冨岡さんが名前ちゃんに!す、好きって言ったって!そそそれって告白よね!?」
「ブッ」


思わず飲んでいたお茶を吹き出しそうになった。深く口をつけていたら危なかった。


「え、なんですかそれ!」
「あら?でもそれに関しては私も聞き及んでます」
「しのぶさんまで!?」


蜜璃さんは恋柱と言われるだけあり、こう言ったお話が好きなのだろうなと思ったけれど、まさか、しのぶさんも。


「それに前からね!冨岡さん、名前ちゃんのことは名前で呼ぶし、名前ちゃんも冨岡さんのこと名前で呼んでるから親しいのかなって、気になってたの〜!」
「ああ、それは私も気になってました〜。冨岡さんが人を名前で呼ぶのはちょっと珍しいですよね、名前さん一体どう言うご関係で?」
「えーーっまってください、誤解です!全体的に誤解かと!」


期待に満ちた蜜璃さん、楽しそうなしのぶさん。そんな二人の視線に慌てながらも、これはしっかり訂正しないといけないと確信する。


「あの、好きと言っていたのは料理のことです。私の作る料理を好きだって言ってくださっただけなんですよ、義勇さん」


それをきっと、誰かが聞いて誤解したのだと思います。と告げると、しのぶさんがまぁそう言う事でしょうね、あの人のことですもんね、と納得したように頷いた。しのぶさんの頷きに、わかると私も頷く。


「あと名前に関しては、義勇さんと私、鬼殺隊に入る前から知り合いで」
「それは初耳でした、そうだったんですか?」
「えー!昔馴染みってことね?なんだかキュンとするわ!」
「はい、私のお世話になった育手と、義勇さんの育手が親交が深かったんです。よく合同の修行もしていて、呼び名はその時のままなんですよ」


呼び方に関しては
実は義勇さんが水柱になった時点で、私からは「水柱様」と呼ぼうとした。でもそう呼んだ時の義勇さんの、なんとも言えない無言(長め)。あげく「俺は水柱ではない」なんて言い出したり、水柱様では返事をしてくれなかったりしたので、元の呼び方に戻したという経緯があるけど、これは言わなくてもいいことだな。


「そう言うことなので、思っているようなことは全く無いんです」


そう告げると、わかりやすく蜜璃さんがしょんぼりとした。…かわいい。ころころと表情の変わる彼女のこういうところは、本当にかわいらしいと思う。伊黒さんの目は確かだ。


「ふふ、大方そんなことだろうとは思っていました。でもそうですねぇ、となるとこの噂、割と広まっていたので、止めるにはなかなか骨が折れそうですね」
「えっ」


しのぶさんの言葉にさっと血の気が引く。え、噂になってるの?
というか一体誰が聞いていたんだろう。あの時は本当に多くの隊士が出払っていたし、人のいる気配もしなかったのに。


「そ、そんなに広まっていたんですか」
「うーん、結構いろんな人が知ってたかも、他の柱の方とか!」
「ひえ…」


蜜璃ちゃんの言葉に思わずと声を上げた。どうしよう、そんなことになっていたなんて全然知らなかった。


「まぁまぁ、人の噂も七十五日、と言いますし、きっとそのうち皆さん忘れますよ」
「…七十五日って、長くないですか??」
「あらあら」


うなだれる私の頭をぽんぽんとするしのぶさんは優しい。

義勇さんの方でこの件に関して誰かに聞かれたりしてないといいな…あらぬ噂はあちらも困るだろうけど、義勇さんがちゃんと誤解を否定できるのか怪しい所だ。


「あの、お二人はその噂、誰から聞いたの…?」
「宇髄さんだったわ!」
「私もですね」
「うわぁ」


あまりよろしくない所からだった!

というか噂が広まっている元凶が宇髄さんなのでは?柱の皆さんが聞き及んでいるのもそのせいなのでは?と思い至り、本日何度目かわからないため息を吐いてしまう。


「誤解を解きに行かねば…ですね」


噂話


(絶対面白がってるあの人‥!)

(やだ、名前ちゃんなんだか雄々しいわ。かっこいい)

(大丈夫ですかねぇ)


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