連載の夢主の設定で、もう少し進んでいる二人です。



これは恋。
なのだと思うと、人間目ざとく想う人を追ってしまうものなのだな、と自覚した。

大きな声は遠くにいても聞こえるのでついどこにいるか探してしまうし、ご飯を食べる時の、大きな一口とか、箸の使い方がとても綺麗だとか。そういう所を意識しては心がぽやぽやと幸福感で満たされる。

そう今も。


「うまい!わっしょい!」


食堂にて美味しそうにご飯を食べる煉獄さんを私は対面に座って眺めて思わず口元がほころんでいる。


(ああしあわせ)


時刻は夕飯時をとうに過ぎた亥の刻。

ひょっこりと顔を見せてくれた煉獄さんと食堂で立ち話をしていた所、彼のお腹が、ぐぅと自己主張をした所から話は始まる。お互いに目を丸くして、煉獄さんはいつもはキリッとしている眉を照れた表情で八にさげた。

お腹が空いているのであれば、食堂担当の出番ですね、と台所であり合わせでご飯を出したのが先ほど。


「お口にあってよかった」
「うむ、君の料理はいつも美味しいな!」
「ありがとうございます!すっかり話し込んでしまいましたが、もしかしてお腹が空いたからこちらへ?」


それなら早くおっしゃってくださればよかったのに。
そう言うと、煉獄さんは私を一瞥したのち、いいやと首を振った。


「違う。ここには、君に逢いにきた」


そして、そんなことを宣った煉獄さんは、屈託なくニコニコしている。


「へ、」
「急に、君の顔を見たくなってな!だからここに寄ったんだ。結果的にご飯も頂いてしまったが」


これが棚からぼたもちというやつだろうかと目の前の人は笑う。私はその言葉にうまく返せず、いよいよ閉口した。

大人しくなった私をよそに食事を済ませ、ごちそうさまでしたと手を合わせる煉獄さん。その所作が美しい。あ、はいようあがりました。と言えば彼は再びまっすぐと私を見る。


「君ももう上がるんだろう、名前」
「そう、ですね。片付けをしたらもうしまいです」
「そうか、なら送っていこう」
「あの、けれど、」


けれど彼は連日任務で疲れてるはずだ。ただでさえ忙しい方なのだから、休めるときに、ちゃんと体を休ませてほしい。


「今日はだいじょ、」


そう結論づけて、煉獄さんに大丈夫だと伝えようとした時。大きな手が私の手に触れた。

驚いて言葉が詰まる。
いよいよ心臓がうるさい。


「れ、れれれんごくさ、」
「わはは!れが多いな!名前どうか遠慮をしないでくれ。俺が、もう少し君といたい」
「あ‥、」


何時もの彼とは違う囁くような声が耳に響く。ダメだろうか、と小さく首をかしげる煉獄さんの、触れる無骨な手の、熱がじわり、私の手に侵食して。

これは現実だと囁く。


「駄目じゃ、ないです…、嬉しいです。私も、もっと傍に、いたいです」
「…うむ!」


ぽろぽろと溢れるように出てきた私の言葉に、煉獄さんは嬉しそうに頷いてくれる。


「あの、煉獄さん」
「む、どうした?」
「て、手を、片付けを済ませますので」


告げると、ああそうだなとそっと離してくれた。その手の、触れる外気の冷たさに、手の熱はすっかりと私にうつっていたのだなと自覚した。じわりと代わりに顔が熱くなる。


「煉獄さんの手はあったかいですね」
「君の手は少し冷たいな」
「水仕事なので。あの、」


あとで、また手をつないでくださいますか
そうおずおずと聞けば、瞬いたのち、彼は優しく笑った。

ああ、この恋が、
こんなに幸せでいいんだろうか。


恋、満ちて


こい こひ 【恋】
愛情を寄せること、その心。恋愛。









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