×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

俺に本命くれるのかな!?

「小夜莉ちゃんバレンタイン誰にチョコあげるの!?」

教室に雪崩れ込んできた善逸が、鬼気迫る表情で私に問いかける。そんな彼から後ずさっていると、興奮気味の彼を引っ張って炭治郎が後ろへ引き戻させた。

「ごめん小夜莉。驚いたよな」
「う、うんちょっと……。でもなんで急に?」
「急じゃないでしょ! だってもうすぐバレンタインだよ!? 俺かな? 俺に本命くれるのかな!?」

やけに必死な様子の善逸をみて、私は考える仕草をとる。善逸に渡すのは何の問題もないのだが、本命と言われたら「それは違う」と真っ先に答えるであろう。彼のことは友達として好きだけれど、恋愛的な意味で好きか?と問われたら首を捻る。

「バレンタインは兄さんにあげるよ」
「あ〜ッ!! 出たよブラコン! そんなんだから小夜莉ちゃんのお兄さんはカノジョ出来ないんだよ!」
「えっ!! それは困る……」

私としては、兄には幸せになってほしいので、カノジョはできてほしいと思っている。それを私という存在が邪魔しているのなら、今年は渡すのを控えようか、と考えていたら炭治郎が「いや!!」と声をあげた。

「妹からチョコをもらえるのは、兄としてはいくつになっても嬉しいと思うぞ!!」
「なんて説得力のある言葉」
「でも!! でもさ! 小夜莉ちゃん本命チョコ作るでしょ? そ、それ誰に渡すのかな〜、なぁんて……」

もじもじとしながら問いかけてきた善逸に、私はまた考える。別に、好きなひととか、いないし。本命チョコを渡すもなにも作らないのだ。そう告げると善逸は残念そうな声をあげて崩れ落ちる。

「でも善逸にチョコはあげるよ」
「っほんとう!?」
「うん。友達だもの。他にも伊之助や玄弥、カナヲにももちろんあげるつもりだし、それに」
「あの、小夜莉」
「うん、なぁに炭治郎」
「……俺の名前が出なかったのは、意図的か?」

寂しそうな顔をしてそう尋ねてきた炭治郎に、私は目をぱちくりさせて瞬きを繰り返す。不安げに私の返答を待つ彼に、私は眉を下げてこう答えた。

「ごめんね。炭治郎モテると思って、私のチョコいらないかなって」
「え?」
「炭治郎、誰にでも優しいからわりと密かに想ってる女子多いと思うし、」
「……」
「あんまりもらいすぎても食べきれないでしょ? だから私からは必要ないかな──」
「小夜莉」

私の言葉を遮って、炭治郎は力強く私の肩を掴む。その勢いがあまりにも良すぎて、私は思わずぎょっとして彼を見上げた。そんな私の反応を見た彼は、正面からこう告げる。

「俺は小夜莉から以外はいらない」
「……は?」
「おまっ……は? お前なに言っちゃってんの!?」
「そ、そうだよ炭治郎。男子って、もらえればもらえるほど嬉しいでしょ? 私からは気持ちだけってことで……」
「いや、それでも、小夜莉からのチョコがほしい」
「え、え〜……?」

とりあえず声が大きいので音量を下げるように指摘する。これを炭治郎好きの女子たちに聞かれたら目の敵にされること間違いなしだろう。私は自分の身の安全を確保したいのだ。

「で、でも炭治郎、禰豆子からもらえれば十分でしょ?」
「禰豆子からは毎年もらっているけれど、それとは訳が違うんだ」
「……? ……!?」

なんだこの諦めの悪さは。いったいどういうことだ、と善逸に視線を送るが、彼は炭治郎の言葉に衝撃を受けているようで、私の視線に気づくことはなかった。

(え……俺は何を見せられている? 告白? 告白なのかこれ? でも炭治郎の音の感じだとそれっぽくもないし……)
「それに善逸にはあげるのに、俺にはくれないのがなぜだか分からないけどものすごく腹立たしい!!」
「それほんとどういうこと!? 俺のこと馬鹿にしてるだろ!?」
「……〜わ、分かったよ! あげる! あげるから落ち着いて!」
「本当か!?」

私の言葉に、今まで怖かった表情をしていた彼は、ぱあっと笑顔になった。その表情を見て、やっとこのやりとりが終わると安堵した私は、思いっきり油断してしまう。

「小夜莉のチョコ、『一番』楽しみにしてる!!」

あぁもうだから、一言余計なんだよ君。