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「今週の日曜、でかけるからな」
「え、あ…いってらっしゃい、」
「違う、お前も一緒にだ」
「えっ!?いや!あの!それって…」


いやはや。なんとも初々しいね。不良×平凡は素晴らしい。

皆さん、もうお気づきでしょう!
なんと、あの2人が!
俺が前々から密かに見守ってきた(覗き見とは言わない)あの二人が…!


「ついにデート…、これを見逃す馬鹿はいないさ…!」


いつもの木陰で拳を握る俺。日曜は外出届を出そうと心に決めた。

そうです、今は昼休みです。昼食持参してます。


会長が倒れてから一週間目の今日。
実は数日ほど前に会長は完全復活していたらしい。学園のトップの帰還に学園が沸いてたのを覚えている。

ただね、普通の風邪で何日も休むのはどうかと思うよ。本当に。
横山さんが過保護すぎて部屋から出してもらえなかったんだろうけど。

会長のことを色々と断言できないのは、俺があれから会長に会ってないからだ。
その姿を視界にも入れていない。
看病も、毎日横山さんが定時に行くみたいだから俺は行かなかった。

これは俺なりの距離の置き方。
まあ、あまり深く考えてるわけじゃなくて。


"会いたく、ないんだよ"


俺の自己満足にいつまでも付き合わせるわけにはいかないな。と思っただけ。
確かに会長の恋は応援してるし、そばで観察したいとは思うけど、会長の気持ちが最優先だろうな、って。

俺の観察対象はこの学園ならそこらじゅうにゴロゴロ転がってるから、大丈夫。
不良さんと平凡君の微笑ましい様子を眺めつつ、呟く。


「よーし、観察観察ッひ…!」


とっさに口を手で覆う。
原因は、メールの受信を知らせる携帯の振動。いきなりすぎて肩がはねた。
マナーモードにしてたから助かったけど、音が鳴っていたら俺の天国行きは決定だっただろう。
野生の勘が冴え渡る不良さんにぼっこぼこにされるね、確実に。観察なのに覗き見だって勘違いされてぼっこぼこだ。もう一度言うけど、これは観察ね。

よく考えたら、そもそもの原因はメールだ。こんなタイミングで俺に送ってきた人が悪い。
タイミングが悪すぎて、俺は死の危機に直面しましたよ…!

送り主にこの激情をぶつけようと携帯を取り出せば、画面には新着メール1件。連鎖的にそれを開けば、送り主は。


「…、会長…」


そう確認するや否や震えだす携帯。
ものすごい勢いで立て続けにメールが来るんだけど!すっごい怖いんだけど!


<おい、脳内小人男>
<無視か…いい度胸だな>
<謝るなら今のうちにしといた方がいいぞ>
<今なら許してやるから返信しろ>
<何かあったのか?>


どれもこれも会長からのものばかり。そんなメールに頬が緩む。
最初強気のくせに、だんだん自信なくなってるところとかヘタレだよね〜

今日も会長は通常運転のようです。ところで、脳内小人男って何…


うーん…何か急用かもしれないし、返事しといた方がいいのかな。
不良さんと平凡君の観察を諦めて、場所を移動しながら考える。

あ、もういっそのこと。
そう思って探し出した会長の電話番号。
通話ボタンを押して、数秒。切り替わる音を聞いて、声を出す。校舎の壁に背をつけた。


「もしもし、会長?」
<…宮野っ、おまえ、>
「さっきからメールがすごいんですけど、どうかしましたか?」
<どうかしたも何も……おまえ、どこにいるんだ>
「何か急ぎの用事ですか?」
<いや…用事とかそういうのじゃねえ、けど…>


聞こえてきたのは、一瞬息を呑んだような間のあとの、揺らいだ声。
久しぶりに聞く会長の声は、相変わらず羨ましいくらい美声だった。

でも、何かが違ってて。


<最近…生徒会室来ねーな、って思って>


ああ、そうか。いつもより声が弱い。
子供が拗ねたときのような声に、俺はからかいまじりの質問を返した。


「……俺がいないと寂しいですか?」
<ばッ、馬鹿言うな!気にかけてやっただけ有難く思え…!>
「はいはい、耳元で大声出さないでくださいよ」


ああ、もう。可愛いなぁ。
本当、いつかそう遠くない未来に悪い人に食われちゃうんじゃないかな。

声に出して笑いそうになる口元を引き締めるので精一杯だ。


<…なあ、宮野…>
「どうしたんですか、改まって」


真剣さの伝わる声音に、自分の姿勢を正した。伝わる壁の冷たさで、落ち着きを取り戻す。


<その、仮に、の話なんだが…>
「はい」
<もし俺が…寂しいって言ったら…、会いに来てくれるのか?>
「……」
<どうなんだ、宮野>


驚きに息がつまる。そんなこと、想像したこともなかった。

もし、寂しいと言われたらー…
さらに答えを促されて、困った。困った末に出した答えが、こんな返事なんて。


「…どう、ですかね…わかりません」


俺はなんて情けないんだろう。


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(あああっ日曜が楽しみだ…!)
(おい、どうした?)
(あの…なんか悪寒が…)
(やば、バレたか…?)
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