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それは、ある日の昼休み。 俺は珍しく王道君&そのとりまき達から離れて過ごしていた。ちなみに昼食はまだだ。 王道君総受けもいいけど、固定CPも捨てがたいよね。ぶっちゃけ、王道君達の方は進展無いからなー…最近まんねり化してる気が。会長に頑張ってほしいところだ。 それに比べて、固定CPなんてこの学園では選り取り見取りだ。ここ最近の俺の推しCPは、不良クラスのトップ×びびり平凡かな!まだ付き合ってないお互いの不器用感がたまりませんよ、本当。 だから今その2人の恋模様を木の陰から観察しているわけだけど、俗に人がそれを覗き見と言うなんて俺は知らない。これは覗き見じゃないんだ、一種の生態調査なんだ。お願いだ、見逃してくれ。 「……あ、あの!今日は…お弁当、作ってきたんですが…あの。よかったら、」 「食う」 不良さん即答!聞きました!?奥さん聞きました…!? ほのぼの萌え〜両片思い萌え〜〜 この感動をどうしたら皆さんに伝えられ… ぽん あれ、何か今肩を叩かれたが。 反射的に振り返る。そこには、にっこり笑った天使。 小柄な体、小さな顔、ふわふわな髪には天使の輪っか。 間違いない、天使だ。 観察しすぎたのか、どうやら俺の目は疲れてしまったようだ。仕方ない、今日はとっておきのブルーベリーを食べよう。そう決意して首を元に戻す。が。 ぽん ぽん 一体何だっていうんだ…!この至福の時間を邪魔するのは、どこのどいつだ。 半ばキレ気味で再び振り返ると、また天使が。 (え、あれ…幻じゃない…?) とか俺がテンパってたら、天使が口を開いた。薄桃色の唇が動く。 「こんにちは、環様。少々お時間頂けますか、お伝えしておきたいお話が、」 天使が喋った…!ん?あれ、しかも名前まで知られている、だと…? 「ええっと…?」 「…その顔だとやっぱり忘れられているようですね」 「す、すみませ、」 「環様の親衛隊隊長、本庄満(ほんじょう みつる)です。ちなみに、この会話は今回で3回目です。いい加減覚えてください、そして一度殴らせてください」 なななな、なん、だって…!? 確かに前に一度、親衛隊設立の許可を出したことがある。どう考えてもおかしいとは思ったものの、あまりのゴリ押しに頷いてしまった苦い記憶が今更蘇ってきた。どうやら俺は、親衛隊関係の記憶は遠くへ流してしまう傾向にあるらしい。おそらくその流れでこの天使のような親衛隊長さんのことも頭に残っていなかったのだろう。そうだ、そうじゃないと俺の頭はただのポンコツじゃないか…ポンコツじゃない…そう信じたい… 脳内で結論が出たところで、くるりと踵を返す。どさくさにまぎれてこの天使さん、俺のこと殴る宣言したからね。逃げるが勝ちだ。暴力はだめですよ、いくら美人でも。 「……」 「……」 背中を向けた俺に無言の圧力。もう腹をくくろう。俺も男だ。 「…お時間頂けますよね、環様」 「はいもういくらでもどうぞ。気の済むまで」 俺は大人しく振り返るしかなかった。だってそうだろう、こんな美人のお願いを断るなんて男じゃない。決して怖かったからとかいう情けない理由じゃないし、もちろんだけどこれは言い訳じゃない。 昼ご飯がまだだったこともあり、俺は天使こと本庄先輩と食堂に向かうことになった。暴力的措置をとられる前に、顔も名前もバッチリ記憶させていただきました、ありがとうございました。 食堂に着き、各々料理を注文。俺はハンバーグ、先輩は蕎麦。 先輩渋いね、顔に似合わず…とは口が裂けても言えないけど。 食堂はいつも賑やかだ。混雑しているから大変かも…と思ったが、席もあいていたし、注文もスムーズに終えることができた。 「早めに本題の話をしてくれるとありがたいんですが、」 「まずは腹ごしらえです環様」 「いいじゃないですか、教えてくださいよー」 「お断りします」 ひどい…! 先輩ってば、俺の扱い方雑すぎじゃないかな。普通にへこむんですけど。 傷心のまま運ばれてきた料理に手を付ける。 この学園の食堂は、一流のシェフを雇っていることもあって、どの料理もクオリティが高い。ああ、肉厚ハンバーグおいしそうだ。熱せられた鉄板で、肉汁が踊っている。 よし、こうなったら餌付け作戦だ。 覚悟しろ先輩。このハンバーグを食べてみるがいい!そして願わくば、俺の扱いを見直して…! 一口大に切ったハンバーグにフォークを刺す。 「先輩、口開けてください。ほら、あーん」 無言で口を開く先輩に、一切れのハンバーグを差し出す俺。先輩が大きな瞳を揺らす様は、まるで懐かない猫のようだった。 ああ、顔がにやける。ペット飼いたくなってきちゃった。 「っ、環様、いけません…!」 慌てた様子で俺の鼻をつまむ先輩。なぜ鼻?って、うわ苦しい。 眉根を寄せると、ようやく先輩は鼻を解放してくれた。結局ハンバーグは食べてもらえていない。 何だったんだ、と困惑する俺の手首を誰かが掴んだ。え、なになに?もう展開についていけないんだけど。 先輩に向かってフォークを差し出す形で固まっていた俺は目線を上げる。 (なんで…?) 驚いたことに、俺の手首を痛いほど掴んでいる彼は、会長様でした。 ----------------------------------- (本庄先輩って猫っぽいですよね) (環様も十分猫っぽいですけど) (えっ、どこが…) (気分がころころ変わるところとか) |