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選べない


(わちゃわちゃやってるだけ)


これは一体どういう状況なのだろう。
俺の左側に座っている彼女はさっきから目の前の食事には目もくれず俺の腕をぺたぺたと触っている。顔はそれこそ冷静に保てている。ただ、頭の中はプチパニックである。


「わあ・・・ライナーすごいねこの筋肉!ムキムキ!」

「あのな、飯食えよ。腹減ってんだろ?」

「うん食べるよ〜、でももうちょっと」

「・・・」

「わあ〜手も私より大きい!見て!わたしの手ライナーの第二関節くらいまでしかない!」


今度は指をするりと撫で始める彼女にやめろおおおおおという視線で訴えている俺の心の中を読み取っているのは、きっと目の前の席に座るベルトルトだけなのだろう。第三者としてやめなよ、とでも言いたげだがさっきから曖昧な顔しかしていない。他の奴らは訓練で疲れた体にスープを流し込んだりあの訓練がどうとかいう話をしたりで俺達の方を気にする気配はない。俺は変な気を起こさないように必死に踏ん張っていてスープの味もよくわからないし今日の訓練のことを思い出せる余裕もない。小さくて柔らかい手が俺から離れないしなんかいい匂いするし・・・あ、アニがドン引いてる。


「あんた、もうやめな。筋肉馬鹿が伝染るよ」

「おい字おかしくないか」

「ええ〜むしろ伝染ってほしいよ〜」

「見たくないね、あんたがこんな風になった姿なんて」

「おいひどくないか」

「だってわたし、筋肉つきにくい体みたいでさあ、訓練でいっつもうまくいかないんだもん」


見よこの筋肉!といって彼女は服の袖を捲り上げて真っ白で柔らかそうな二の腕に力を込めて力こぶ(と本人は主張する)を披露する。突然のことに、ぶっ!とスープを吹き出す。目の前のベルトルトが汚いよライナーと若干引いてる。お前が一番ひどいだろ。


「真面目に訓練してる割に全然つかなくって」

「ほんと何もないね、ぷにぷに」

「やだやめてよアニ!くすぐったい!」

「・・・」


なんか、なんというか、ふたりがじゃれている姿に変な気分になる。確か女子の二の腕の柔らかさって胸と一緒だとか何とかコニーが言ってた気がする・・・おいなんだベルトルトその目は。俺まだ何も言ってないだろ。別にあのぷにぷにと見るからに柔らかそうな二の腕触りたいとか思ってないから。やめてくれ。俺はクリスタが好きなんだ、変な気なんか起こしてたまるか。


「ねえねえライナー!腹筋触らせて!」

「は!?いや、それはだめだ」

「ええ〜いいじゃん減るもんじゃないんだから〜」

「だめなもんはだめだ」

「じゃあ胸筋!胸筋ならいいでしょ!?」

「腹筋だめで胸筋がいい訳ないだろ!」

「おーねーがーいー!どっちか選んで!」

「選ぶとか無理だ!」

「何頬染めてるんだい気持ち悪い」

「ライナー・・・」

「お前らさっきからいい加減にしろよ!」



(結局どちらも触られた)



20150903
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