[心の愛]


『 But what it is, is something true
 しかし ここには 三つの言葉からなる 真実がある

  Made up of these words that Imust say to you 』
 それをきみに伝えよう



 それはまだリンがエドワードを泣かせる前の、2人が付き合い始める前のこと。
 その頃のエドワードからのリンの印象はこうだった。

・アルの友達
・年下のくせにデカくてムカつく
・ナマイキ
・でもいい奴
・友達

 憐(あわ)れ、リンがそれを塗り替えるのに奔走していた頃のこと。




「何聞いてるノ?」
 後ろから聞こえた友人の声に右肩から振り返ると姿がない。
 左側からながい手が伸びてきてエドワードの右耳からイヤホンを奪う。
「…スティーヴ?好きなノ?」
 リンはそれを自身の右耳に詰めながら顔を寄せてくる。
「や、色々入ってんの」
 「どレ?」とiPodを操作するエドワードの左手の上に一回り以上大きな左手が載せられる。
 隣にしゃがみこんだリンは机に顎を乗せるような体勢でエドワードの手の上からつるつると液晶を操作した。
 ……なんか近いな。

「あ、これ好キ」
「どれ?」

『 I just called to say "I" "love" "you"
 ただ「僕は」「きみを」「「愛してる」と言うために電話したんだ

  I just called to say how much I care 』
 僕の気持ちを伝えたかっただけなんだ

 エドワードの左手にはリンの左手が添えられたまま。
 ……なんか、いつまでこうしてんだろ。

「ここの歌詞が好きなんダ」
 自分の手に乗せられたリンの手の熱ばかり気になってしまう。
 するとリンはゆっくりとそのフレーズをくちずさみながら、エドワードの指の間から指を絡めてくる。

 ……えっ。

「『 I just called to say "I" "love" "you"
 きみに「愛してる」と言うためだけに電話したよ

  And I mean it from the bottom of my heart 』……」
 つまり 心の底から 愛してるってことさ

「………〜〜〜っ!」
「エド?」
 エドワードの隣でリンが口ずさむ。優しいラブソング。


「姉さん、リン!探しちゃった、よ…?」

「…っあっはははははっはあははははは!!!!!」
「えぇエーーー!?」
 エドワードの様子をこっそり窺いながら歌っていたのに、リンはまさか爆笑されるなんて思いもよらない。


「リン……!おま…!歌超ヘタ……!!あーっははっはっははは!!」
「へぇ、ボクにも聞かせてよ」
「違!ほラ、イヤホンしながらだと上手に歌えないでショ!?」

 わざとラブソングを選んだリンは、エドの予想外の反応にショックを隠せなかった。からかってくるアルフォンスの様子にも恥ずかしい。

 エドワードからのリンの印象に不名誉な項目が追加された。

・歌がヘタ





 エドワードもリンもこの日のことを忘れてはいないけれど一緒にいて思い出しもしない。
 そんななんでもない日のこと。

『 In fact there's just another ordinary day 』
 今日はとても普通のありきたりな日




(I Just Called To Say I Love You [心の愛] / Stevie Wonder)




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