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Summer Kiss
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「夏子、ストップ」



と急に言われて、夏子は中途半端に舌を出したままキョトンと動きを止めた。

なぜか清墨の顔が近づいてくる。

驚きのあまり硬直する夏子の目の前に清墨の整った顔。

その差は実に数センチ。



「そのまま動くな」



清墨は静かに、けれど有無を言わさない響きでそう言うと、夏子の頬に手を添えて。

そしてチロリと出された夏子の舌に、自分の舌を這わせた。

状況がよく分からず、夏子は驚いて目を見開くが、清墨がおかまいなしに夏子の小さな舌に自分の舌を絡ませてくる。



「ん…」



チュッチュッと二人の唇から水音がしだし、それはいつのまにか深く濃密なキスへと姿を変える。

清墨の唇がついばむように夏子の上唇を攻め立てる。朦朧となる夏子のことなどお構いなしだ。

激しくなるキスと一緒に、清墨は器用に夏子の手から皿を取り上げてテーブルに置いた。

そのまま髪をまさぐり、腰を抱く。

夏子の体が溶けてしまんじゃないかと思えるほど、そのキスは熱く、そして艶かしかった。


ひとしきり夏子の唇を味わった清墨がそっと顔を離すと、夏子は少し涙目で真っ赤になっている。



「口の中が冷たい」

「い、いきなりこんな…」

「美味しそうだったから、つい」

「だからって…!」



当然ながら、まだ慣れないキスにあたふたと動転する夏子を見て、清墨は楽しそうに口端を上げる。



「これぞ日本の夏のキスだろ?」

「何言ってるんですか」

「食べてくださいって言わんばかりに舌つきだしてたじゃないか」

「ち、ちがいます!」

「夏子は助平だからな」

「な!だから違いますってば!」



今度は清墨が肩を震わす番だ。

真っ赤になって必死に否定する夏子は、清墨の思うつぼだ。けれどそれが清墨の心の火にどんどん油を注いでいるわけで。

まっすぐに感情を表す夏子に、清墨のポーカーフェイスも崩れていく。



「かき氷が溶ける。ほら、もう一回あーんってしろ」

「う…ちゃんと食べられないじゃないですか」

「なぜ?ほら口開けろよ。ブルーハワイだぞ」

「だって清墨さん、また絶対キスする」

「分かった。もうしない」

「ホントですか?」

「ああ、しないしない。安心して食べろ」

「それじゃ…」



素直に聞き入れた夏子の口に、清墨はスプーンを滑らせる。

けれど、パクッと頬張った夏子の唇を、清墨はまた強引にキスでこじあけた。



「んんん!」



案の定、さっきみたいに絡みつくような口づけをされて、夏子はフラフラだ。

清墨は、仕上げと言わんばかりに夏子の唇をペロッと舐めてからニヤリと笑う。



「うまい」

「き、清墨さん!」

「お前の冷たい舌が、俺の舌でどんどん熱くなるのがいい」



カーッと頭が沸騰するような台詞に、夏子はただ顔を赤くすることしか出来ない。

愛らしく反応する夏子に上機嫌の清墨は、夏子の頬に手を添えながら言った。



「かき氷、気に入った。今夜は夜通しでかき氷のプレパーティーだ」



そのまま呆気にとられる夏子の髪をそっと撫でた清墨は、ごく自然に、ゆっくりと、夏子をベッドへ組み敷いた。

清墨の冷たい舌が夏子のうなじを這い出す。



いつの間にかすっかり氷は溶けてしまっていたが、二人はもうそれを気にする余裕もなく、シーツの海へと深く深く溺れていった。







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