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Summer Kiss
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パクッと二人一緒にスプーンを口に運ぶ。


冷たくて甘い風味が広がって、夏子は懐かしさに目を細めた。


清墨をチラリと見ると、神妙な顔つきで一口二口と続けざまに頬張っている。




「どうですか?かき氷」


「うまいな」


「おいしいですよね。このチープな感じが逆に…」


「これが日本の夏か」


「はい!夏の定番です!清墨さんと食べられてうれしいです」




素直に喜びを表しつつニッコリと夏子が微笑むと、清墨がしばし夏子を見つめる。


見つめる、というか、まるで目が離せないといった感じに。


それから清墨は、なぜか大きく口を開けた。




「?」


「そのイチゴ味も食わせろ」


「え?」


「早く」




口を開けたまま待機姿勢の清墨に、夏子は(食べさせろってことだよね)と、スプーンにひとかけら掬う。


ナチュラルにこんな状況になっているが、もう一度念を押しておくと、付き合い始めて日は浅い。とにかく浅い。


そのせいか、夏子の心内に急激な恥ずかしさが込み上げてくる。




「夏子、何をしてる?早くしろ」


「…あ!は…はい!」




外国育ちだからなのか、まったくもって平然としている清墨。


夏子は(照れてるのがバレたら絶対からかわれる)と、つとめて冷静を装って清墨の口にスプーンを運んだ。


パクッと頬張った清墨と目が合う。


冷静に冷静に、と考えれば考えるほど、夏子の頬が熱くなっていく。




「ふーん、イチゴもうまいな」


「で、ですよね」


「ところで…」


「なんですか?」


「なぜそんな赤くなってるんだ?」




清墨はお見通しと言わんばかりにニヤッと笑って、自分の皿からかき氷をひと掬いする。


そのまま夏子の口元にスプーンを運んだ。




「こっちも食べてみろ」


「あ、味は知ってるから!だだ、大丈夫です!」


「遠慮するな」


「え、遠慮してないですっ」


「ほら、あーんってしてみろ」




真っ赤になって首を振る夏子を、清墨は完全に面白がっている。


「ほら、食べろ」としつこくスプーンで唇をつつく清墨に、夏子は観念して口を開けた。




「あ…あーん」


「!?…おい!口の中どうしたんだ」


「はぇ?」




スプーンと唇の距離があとちょっとというところで、いきなり清墨は夏子の顎を指で固定した。


夏子は口を半開きにした状態で清墨に顎をつかまれる形になり、当然だがうまくしゃべれない。




「ちょ…ちょっろ!きよふびさんっ!は…はなしでくらさい!」


「夏子の舌、真っ赤だぞ」


「へ?」


「ベーッてしてみろ。ほら。舌が異様に赤い。大丈夫か?」




いつも冷静な清墨が、若干焦ったように夏子の口の中を覗き込む。


夏子はブハッと吹き出した。




「あっはは!これはシロップのせいですよ!イチゴ味は真っ赤になるんです!ぷっふふっ」


「シロップだと?」


「清墨さんだってホラ、鏡見てベーッてしてみてください」




夏子のクスクス笑う声に不服そうな目をして、清墨は壁にかかった小さな鏡に向かって舌を出す。


ブルーハワイのせいで真っ青になった自分の舌を確認したのだろう。




「ジーザスッ!」




と頭を抱えて、夏子をキッと睨みつけた。


まさか自分の舌がこんな大惨事になっていようとは夢に思っていなかったのか、予想以上に狼狽える清墨に、夏子は可笑しくて肩を震わせる。




「ショックを受けている恋人を笑うとは、夏子はヒドいヤツだ」


「プッ、わ、笑ってませんよ」


「笑ってるじゃないか。おい、これは消えるんだろうな」


「大丈夫、消えますよ」


「ホントか?」


「これもかき氷の楽しみのひとつなんですよ」




そう言って、夏子もベーッと真っ赤になった舌を出して笑う。


その時だった。




「夏子、ストップ」



清墨が突然真顔でそう言った。








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