ハジメテの、夏
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清墨さんの、色々な表情を見れることが嬉しくて思わず緩んだままの頬。
「…いひゃい……」
「さっきから笑いすぎだ」
少しだけ抓られた右頬を、さすりながらもやっぱり笑みが零れてしまう。
「清墨さんも、カッコいいですよ」
「…そうか?侍もこんな感じだったのか」
自分の浴衣姿が、どことなく嬉しそうな清墨さん。
「ふふっ、今度お侍さんがいるところに行きましょうか?」
「…!いるのか!?」
「うーん…本物じゃないですけど…」
「偽物…そうか、皆、真似したいくらい人気があるのか…」
「えっ…う、うーん…?」
話しながらも、再び視線を夜空に向ける。
赤や青、黄色の花火が次々に表情を変えては打ち上がっていて。
「あっ!今、ハートの形でしたね!」
もう一度、クルリと顔を上げれば。
「あ………」
穏やかに笑みを浮かべながら、私を見つめる清墨さんと視線が絡み合う。
「夏子…」
フッと笑って、彼の手が私の顎を捉える。
「あ、の…」
「………Close your eyes」
「んっ………」
暖かな吐息と共に、感じる熱。
花火大会は、佳境を迎えたようにスターマインがドン、ドンと打ち上がる。
「………I love you more than anyone」
「ん…」
「夏子は?」
「え、と……?」
「…ちゃんと聞き取れ」
「んっ………」
何度も続く口づけと、囁かれる愛の言葉。
花火の音で、かき消されそうなくらいには小さな囁きを。
(清墨さん……)
一つも聞き残さないように、と。
ギュッと彼の浴衣の襟を掴む。
「私もっ…ん……」
「………」
お互いの気持ちを伝え合うようなキスを、何度も何度も繰り返す。
花火の音と、光に包まれながら。
「………愛してる」
見つめた瞳には、大輪が一つ。
キラキラと、輝いて見えた。
*END*
ByみかんC:*orange theta*
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