マフラーは鼻の下まで隠れるくらいにぐるぐる巻いて、あったかいポンチョと120デニールのタイツ おまけにムートンブーツを装備して寒さに打ち勝つ準備は万端であったはず。

「さ、さささむいよう…」
「そんだけいっぱい着てんじゃん」
「冬は侮っちゃだめね」

ももたろうのリードを持つ健也くんはマフラーを巻いてるだけなのに寒くないんだろうか。ああはやく帰ってあったかいココアが飲みたい。たしかお母さんに頼まれたのは玉ねぎニンニクじゃがいも…

「ねえ、ひき肉って何グラムって言ってたっけ?」
「んーと…250?うわっももいきなり引っぱるなって!」

ももちゃん もといももたろうは小型犬だけど割と力持ちなのだ。健也くんはももちゃんに引っぱられるようにして走っていく。「あっ源田先輩!」健也くんの走るスピードがはやくなった。さすがサッカーをやっているだけのことはある…ところで源田先輩とはいったいどなた?

「おお成神」
「先輩イヌ飼ってたんすね」
「(どうしよう行きにくい…)」

すこし離れたところでただ突っ立っているわたしってとても変なひとに見えるんじゃ?かといって健也くんと源田先輩?のそばにも行きにくい。なんてったって源田先輩はたいへん見目がよろしい。健也くんもかっこいい方だとは思うけれど、またちがう感じでかっこいい のでそんなふたりのそばに行ったらわたしのちんちくりんさが際だってしまう。

「(かなしい…)」
「成神もイヌ飼ってたんだな」
「あ、こいつはいとこん家のです」
「(先に八百屋さん行ってようかな)」
「いとこ?」
「はい あそこでそわそわしてるやつ、梭鞠!なんでそんなとこいんのー!こっち来いよー!」
「(えっ呼ばれた!)い、行くの…?」

イヌを連れた男の子2人組がこっちを見ているなんてふしぎな光景。健也くんのおおきな声でお買いもの中の奥様方がちらちら見ていることに気づかないのだろうか。あんまり行きたくない。ゆっくりムートンを履いた足を動かしてふたりのところへ行くと、源田先輩とやらと目が合った。あれ、なんだか見たことがあるような気がする。たぶん気のせい。それから源田先輩は大人びたえがおを浮かべた。

「こんにちは」
「こ、こんにちは 健也くんのいとこをしています」
「あっ 成神の先輩をしています」
「(なにこの挨拶)」

源田先輩はとてもいいひとな気がする。性格もいいにちがいない。なにしろイヌがすきなひとに悪いひとはいないのである。…源田先輩とふたりしてにへら、とわらっていると健也くんがあきれたような顔してこっちを見ていることに気づいた。

「な、なに?健也くん」
「べつに?」
「ちょっといま鼻でわらったでしょ」
「あ、梭鞠 源田先輩もイヌ飼ってるんだって、ほら!すげーふかふか!」
「わあ!ほんとだ、ゴールデン!」
「(単純)」
「なんていうお名前ですか?」
「えっ、あ 幸次郎です」
「へえ、幸次郎くん!かわいいねえ、すごいふわふわでいい毛並み!」
「先輩、それは先輩の名前でしょ」
「あっ」
「えっ」

健也くんがたのしげにとなりでわらった。








「なんだか恥ずかしいな…」
「源田先輩は幸次郎ってお名前なんですね」
「ああ、はい」
「ていうか梭鞠と源田先輩は同い年だから」
「えっ」
「えっ」

february 23 ▼ 2012

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -