「梭鞠、中学生みたいじゃん」
「みたいじゃなくて、中学生なんですわたし」
「そんじゃあこれからは梭鞠先輩って呼んだ方がいいっすか?せんぱい?」
「そうですね これからはケイイを持って先輩に接するように、健也後輩」
「梭鞠敬意って漢字かける?」
「失礼な!」

くるみパンをほおばっていたら、リビングのドアから顔をのぞかせたいとこがにやりとわらう。背中には真っ黒のランドセル、あたまにはヘッドフォンつき。小学生でヘッドフォンつけて登校なんていいご身分ですこと!残しておいたいちごを食べようとお皿に手を伸ばすと、先に伸びた手がそれをつかんで口に放りこんだ。もちろんわたしの口はからっぽである。

「わたしのいちご!いつから健也くんはそんな意地悪な子になっちゃったの」
「俺はずっとこうですよ、せんぱい?」
「ちいさいころはこんな子じゃなかった…!!」

ぎりぎりと歯が鳴りそうないきおいでいちご泥棒を睨むと、いちご泥棒はふふんとわらってわたしのお母さんのところへ逃げた。あいつ!!あらあら困ったわねえとまったく困っていない様子でわらうお母さんの横で、あらあら困ったわねえなんてにやりとふたたびわらう健也くん。だめだぞわたし 落ちつけ。わたし中学生 健也くん小学生。ここは年上の貫禄を見せつけてやる!

「そんなことで怒るわたしじゃありませんのよ」
「ぶふっ うける」
「きいいい」
「さるのマネ?」
「(年上の貫禄年上の貫禄…!)さっさと小学生は小学校にいってください!!」
「あらあら困ったわねえ」

あ、やだもうこんな時間。お母さんがそうこぼしたとき、いやな予感がして時計を見た。なんてこと!…スーパーマンもびっくりなスピードでおかずを食べて歯みがきをして、それから鞄をひっつかんだ。あたらしいピカピカの革靴にいれたつま先を2回こんこん。うしろから俺も行くと健也くん。そうして健也くんとふたりしていってきますを言って玄関からとびだした。

「それじゃあまたね健也くん!」
「あっ梭鞠!」
「なあに?」

健也くんとは反対の方向へ走りだそうとしたわたしの背中にかかった声に振りかえると、にかりとわらって「制服似合ってる!すげーかわいい!じゃーな!」。ランドセルを揺らして走っていくうしろすがた ぽかんと口を開いて突っ立ったままのわたし。いつの間にそんなこと言うようになったの?なんとなくほっぺたがあついけど知らんぷりしておこう。すこし遠い雷門中へ向かって走りだすとちょうど向かい側から走ってくる男の子とすれ違う。一瞬だけぱちりと目が合った。そのまますぐ離れた視線はおたがい反対方向へ。
あの軍服みたいな制服、どこの学校だろう?あの男の子も遅刻かもしれない。そうしたらおそろいだなあ。春に吹く風にスカート翻して走った。





「成神も遅刻か?」
「源田先輩もすか?」

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