「さむいねえ」
「マックスの帽子あったかそうだなー…」
「貸さないからね」
「あったかそうって言っただけじゃんか そういえば半田はいくつチョコもらったの?」
「え?」

とつぜん話しかけられておもわずとなりのやつの顔を見る。「(…寝癖ついてる)」こいつはいつも話があっちこっちななめ上あたりの方向へ飛んでいく。マックスの帽子とチョコレートのあいだにどんな関係性があるのやら。

「寝癖ついてるぞ」
「えっうそ」
「それ見て風丸がわらってたよ」
「!!、風丸くんが!?!…じゃなくて!」

あわてて寝癖のついてるばしょをぺたぺた触りながら怒ったような顔をする木園を見てマックスとふたりしてわらった。

「半田のチョコレートのはなし!マックスはどうせいろんな子にチョコねだったんだろうし」
「かわいいからあげるっていろんな子がくれたよ」
「それどんな理由だよ」
「半田はせいぜい1個とかでしょ、ひがまないのー」
「う…(木野からの義理ひとつ…)」
「はい!そんな半田くんのためにがんばりました!」

ななめ上あたりの方向を行く木園のぐるぐる巻きのマフラーから見えるほっぺたは寒さでかはずかしいのかじんわり赤くなっている。俺のためにがんばったって、どうしたってそんなはずかしいことポンポン言うんだ。

「半田 顔真っ赤!」
「うるさい!!」
「ぷふふ あ、梭鞠僕のは?」
「あるよ」
「(あるのかよ…わかってたけどな、ウン)」

渡されたきれいにラッピングされた包みからあまいにおいがする。「…ありがとな」「まずかったらごめんね」まずいなんてことはない気がしたし、はにかんだようにわらった木園がせっかくくれたってだけで充分だ。

「これなあに?」
「カルーアミルクケーキ」
「なんだそれ」
「たべてからのおたのしみー」

ぐるぐる巻きのマフラーを手で直して、それからうさぎみたいにしてぴょんぴょん跳ねた木園のポケットから軽やかな音が鳴る。そんな木園を横目にマックスは早くもいまもらったものじゃないラッピングの袋をがさがさしてチロルをたべていた。

『梭鞠ん家、鍵あいてないんだけど』
「えっ健也くんきょううちに泊まる日だっけ?」

えっ、はこっちのせりふである。もぐもぐさせてた口を止め、今度はまんまるの目をぱちくりさせたマックスと目が合った。俺だって目がぱちくりしている。ケンヤクンってだれだ。

「ごめん、健也くん鍵持ってないから先に帰るね」

そう言うなり木園はスカートを翻すようにして走って行った。そんな走りかたするとパ、…下着見えるって前言ったのに。じゃなくて、だからケンヤクンってだれ。






「ケンヤクンって知ってる?」
「俺が知ってるわけないだろ」

バレンタインデーの帰り道でのおはなしでした
february 28 ▼ 2012

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