わたしのつくえの上のシャーペンとルーズリーフに自慢げに胸を張っているように見える ちょこんとたたずむ紺と白のリボンつきのちいさな箱を見てそわそわしてみたり、リボンを指でつまんでみたりした。わたしはそれでもほどいてしまうのさえもったいなくてただ見つめているばっかりで これをくれた本人はいまごろサッカーボールを蹴ってグラウンドを走りまわってるんだろう。

「(たべれない…!)」

あんまりあまいものは苦手かなあとかきっといろんな子からあまいチョコレートケーキをたんともらうんだろうとか 不安になったりしてつくったきな粉のダコワーズのお返しにとくれただいすきな幼なじみからのお菓子。金色の星がちりばめられたような柄の包装紙に包まれていて リボンだってかわいくって蘭丸ったらかっこいくてかわいいだけじゃなくてセンスもいいんだ。

「待たせてごめんな」
「!、蘭丸」
「まだ終わりそうにないんだ」
「あれ、じゃあいまは?」
「休憩中」

わたしの前の席の椅子にうしろ向きに座って「まだたべてないのか」って蘭丸がわらった。そりゃあだいすきな君にもらったものですもの、「なんかもったいなくて」。結局わたし以外の子からのチョコレートは断ったんだと言ってたっけ。それでも靴箱に詰められたものだったりつくえの上に置きざりにされたチョコレートは紙袋に入れて持って帰っていた。恋人が人気者なのはうれしいけれどやっぱり複雑な、ちょうどしょっぱいのと苦いのとあまいのが混じったような気もち。

「もったいないって、あのなあ」
「なに?」
「それでたべなかったりして腐らせたら怒るぞ」
「ちゃんとたべるよ!」
「買うのはずかしかったんだからな、たべてくれないと困る」
「大事にたべる。…ほんとうにありがとう」

2年でピカイチのかわいさだというマドンナさんより、幼なじみのこんなちんちくりんなわたしのそばにこうしていてくれるということ。うれしくって頬をほころばせば蘭丸もほほえんで、そのあとなにかを思いついたように箱のリボンをほどきはじめた。それから箱のふたまで開いて、中身のなにやらお高そうなトリュフがみっつ姿を見せた。もしかしてじぶんでたべちゃったりするんだろうか。ふしぎそうな顔してるわたしに気づいたんだろう、蘭丸はにやりとわらってひとつを細くてながい指でつまんだ。

「はい、あーん」
「!!?!」
「はやくたべてくれないと溶ける」
「えっあの、えっ!??」
「ほら口開けろって、はいアーン」
「え、いやあの…ん」

獲物をみつけたライオンみたいにたのしげに目を細めた幼なじみはこんなSっ気つよい男の子だっけ?かたや獲物であるぶるぶる震えるウサギのわたしはおとなしく口を開いておくこととする。きっといまわたしはなんともマヌケな顔してるんだろう。おまけにものすごくはずかしくって仕方ない。蘭丸じゃなくてS丸ってなまえの方がお似合いね。開いた口に入れられたトリュフはとってもあまかった。

「お、おいしゅうございます…」
「そうか、ならよかった」




三・一四事件
そのに 霧野蘭丸
march 14 ▼ 2012

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